中間テスト発表前。

焦っていないといったらうそになる。
最初に集めたデータ通り、松崎絢香は、化け物だった。
そこに、島崎が付いた。
上位の奴らは騙せなかった。
俺は、意外と焦っていた。

授業の休み時間に、悠美からメールが届いた。
それは謝罪のメールだったけれど、放課後、少しだけ話がしたいとのことだった。
当たり前のように了承して、渡したいデータの準備をした。
そんなことをしていると、放課後は簡単にやってきた。

悠美

あ、神崎君、おまたせぇ

少しだけ先についていた俺に、軽く謝りながら悠美は近づいてくる。
校内で誰にも聞かれずに話ができるのは、俺が用意した場所しかない。
ここは、体育館倉庫だった。

神崎

だれにも見られなかった?

悠美

うん。それは気を付けたぁ

神崎

ならよかった

俺の前でも悠美は決して、仮面をとったりしない。
完璧に守りたい女を演出する。本当、嫌な女だ。

悠美

今日したかったお話はねぇ、謝ろうと思ってぇ、その、あのことなんだけどぉ……

濁した言い方をした彼女に勝算を送りたくなる。
ここまで手を汚させているのに、決して自分が危なくなることは口に出さない。
軽くうなずけば、悠美は話を続けた。

悠美

悠美のためを思ってやってくれたんだろうけど、そのあと、大変だったんじゃないかなって。止められなくて、ごめんなさい

神崎

別にいいよ。俺が勝手に一人でやったことだし

悠美

うん、ごめんね

神崎

で?話って何?

悠美

うん。お詫びってほどじゃないけど、最近悠美にやさしくしてくれる先輩を紹介しようと思って

神崎

え?

悠美が携帯で誰かに連絡をとった。
すぐに倉庫のドアが開いて、2年生の先輩が入ってきた。
なるほど、悠美の手ごまはほんとに、強い人ばかりだ。
俺なんかいなくても、悠美は一人で懸命に生きている。

悠美

紹介するね。2年生の2位、桐山光先輩だよ

なんの気負いもなく現れたのは、2年生で強い権力を持つ先輩だった。

41時間目:何を思う(1)

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