浅里丘に時雨先生を含むクラス全員が集合した。

渚 琴美

じゃあ、どうやって食べましょうか


学級長の渚が意見を求める。

時雨 詩織

みんなで輪になって食べましょうか

水澤 遥

あぁ。で、工藤が中心で

工藤 柊作

断固拒否する


そんなこんなで俺は江岸と浦部先生に挟まれる形になった。

渚 琴美

じゃあ、音頭を工藤くんに

工藤 柊作

はぁ!?

急な無茶ぶりに変な声が出た。



なんでそうなる?
隣の江岸は躰が震えていて、浦部先生は変わらずニヤニヤしている。

工藤 柊作

ぇ、え~と……


はっきり言って、俺はこういうの得意ではない。
気の利いた音頭なんかとれるわけないし、昨日に至っては人と関わることすら嫌悪していた自分だ。

急な展開に頭がフル回転し、絞り出した答え。

工藤 柊作

……いただきます


青い空の下、約20人の合掌が響き渡った。

全員がそれぞれの弁当を鞄から出す。
浦部先生と酒井さんのみ団子だ。

淡野 茜音

工藤くん、それ自分で作ったの?

工藤 柊作

…うん


クラス全員がざわめいた。

江岸 梨奈

工藤くん、材料は?


江岸が聞いてきた。

工藤 柊作

露樹さんから少しもらって


またざわめき。

あず姉だと?

この新参者、あず姉の近くに住んでるのか!

うらやましいぜ!


特に男子が変な興奮している。

工藤 柊作

てか、あず姉って…?


あぁ、と言って江岸が説明してくれた。

江岸 梨奈

あず姉はあたし達の二年先輩なの。といっても、岸ノ巻は狭いからそのくらいの年齢差は先輩後輩っていうより、兄弟みたいな関係なんだ。あず姉は小さい頃からしっかりしてて、あたし達にも優しく接してくれていたから、あたし達にとってお姉さんみたいな存在なの


へぇ、と相槌をうつ。

実際、俺も露樹さんに救われたため、それには手放しで賛同出来る。

露樹 梓

聞かせてくれないか、君に何があったのか


あの時の露樹さんの目は他人という枠を越えた何かを秘めていた。

工藤 柊作

姉弟か……

元から兄弟もおらず、身内すらいないに等しい俺にとって、露樹さんは姉と呼べる存在なのかもしれない。

ふと、目の奥が熱くなったのを確かに感じた。

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