気がつくと玄関先にいた。
靴も履いたままで。


……夢?



暗い夜道か門のあたりから
始まるのが常だった。

この期に及んで
また新しい展開が始まるのだろうか。



なんせ


此処に飛ばしたのはあの女だ。
























お邪魔します!



とりあえず

廊下の先に向けて
大声を張り上げる。


何故「ただいま」でないかと言えば

















































……前述したことを
繰り返し説明するつもりはないけれど。































しかし誰も出て来ない。


























寝てる、のかな?


一般的な家庭なら
夜中の一時など
とうに床についている時刻だろう。


しかしこの家は違う。



どれだけ遅くとも
紫季は起きて待っていたし

灯里も納品や何やと
深夜に出かけることが多い。





灯里の父親だけは
わざわざ晴紘を出迎えるために
工房から
出て来るはずもないのだが……

ってことはまたあのオッサンがいるのか?






この期に及んで
あの男には正直会いたくない。




聞きたいことは山ほどあるけれど





答えてくれるかは別問題。
















あの男が、瞳子を奪った侯爵から援助を受けるだろうか

同じ顔の人形を作ってしまうくらいに未練があるのに

どちらかと言えば瞳子を渡したことへの慰謝料という意味合いのほうが強いけれど……

それこそ、あの嫁さん大好き男が受け取るはずがない





それよりも
歓迎していない態度が見え見えで
どうにも居心地が悪い。
















ん?




また

あの臭いがする。




























……




臭うということは
前回と同じ世界なのか?

それとも歯車をひとつ違えただけの
疑似世界なのか?



それはわからないけれど。

……まさか























以前にも浮かんだ想像が
頭をよぎった。




残る部位は顔。
もしくは頭。
木下女史が生きていたところで
足が加わるかどうかの違いだ。

顔か頭が標的のひとつであることに
変わりはない。




猟奇事件の犯人が誰であっても
それを狙うことは間違いない。




紫季はあの年頃の娘にしては
随分と整っているほうだ。

まるで自動人形のように。



もしかしたら今頃は殺されて、
厨房の隅にでも
転がっているのではないか?

首から上が
丸ごと消え失せているか、
顔の皮だけ剥がされているか。



ま、さか……




だから
この世界に紫季はいなかったのか――?








pagetop