西園寺邸から帰ってからも
眠ることなどできなかった。

……


晴紘は布団の中で寝返りをうつ。

枕に突っ伏してみても
睡魔はやって来ない。





















窓の外は闇。

部屋の中も闇。







この時間では
紫季も休んでいるだろう。

廊下も食堂も
真っ暗に違いない。



その中を





と何処からともなく足音が
近づいてくる気がして、

晴紘は枕で頭を覆った。
























灯里に会いたくて
西園寺邸にまで行った。



明るい日差しの下でなら
灯里も
連続事件の犯人の顔ではないだろう、と

そんな思惑もあった。




でも、今は違う。
















あたりを包むのは闇。

今の灯里は










裏の顔。







再びあいまみえることがあれば、
躊躇なく
刃を向けて来ることは確かだ。























怖い、のか?

灯里が?




晴紘は寝返りをうつ。

……


ここは灯里の家。

その気になれば
彼は難なくこの部屋まで
来ることができる。






それが怖いのか?














切られた傷が

じくじくと痛む。
























……違うな










『死んでくれる?』









俺は、



あれは灯里の顔だった。
灯里の声だった。

犯人を知るために行った過去で
知った事実。

それは覆すことなどできない。









それなのに
未練たらしく
灯里が犯人でなければいい、
なんて思って

犯人でなくなる理由を探して













その一方で、

酷い奴だよ、なぁ……

犯人だったらいい、と
思っているのも確かで――。
















































遺体の一部を
人形のパーツとして見る灯里と










人形に見えない撫子と




そして、




良い足が手に入ったからね

侯爵の言葉。

考えれば考えるほど
つじつまは合うばかり。






















この一連の猟奇事件は

全て撫子のためだけに
起きたのだとしたら。














でも。






そんな。













 



そのために、人を殺めるのか?

灯里。


















どうしたらいいのか……もうわかんねぇよ……












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