霊深度
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五
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はぁ、はぁっ
僕は方向転換して、逃げていた。
荷物はとうにどこかに落としてしまって、ただ彼女だけを背負って走っている。
きっとよろよろの僕を捕まえることなんて簡単だっただろうに、まだ犯人には捕まっていなかった。
でも気配は消えていない。
逃げきれたとは思えなかった。
もう……いい、です……
何?!
もっと大声で言ってくれなきゃ聞こえないよ!!
もう、いいんです……
私を放って逃げて
何言ってるんだ!
そんなこと今更できるわけないだろ!!
なんでこんなに家も店もないんだ?!
さっきまであったのに……
誰か助けてくれよ!!
だって……
さっきからずっと、人気のない方へ誘導されてる!!
え?
地元だから知ってるの……
こっちに行っても、警察どころか家一軒無いわ……
私たち犯人に遊ばれてるの!!!
どうせ死ぬのよ!!
膝から力が抜けそうになった。
そんな……そんな、
だから、あなただけでも、私を囮にして逃げて……
どこかには隠れられるかもしれない
あんな状況で私を助けようとしてくれたあなたに、死んでほしくないの
……だよ
え?
僕だってそうだよ
僕は止めかけた足を、またゆっくりと動かした。
速く、速く、スピードを上げる。
あんな状況で助けたいと思った人に、今更死んでほしいわけないだろ!
だから、諦めないでよ……
……
いつの間にか傾いていた陽で、空も道路も真っ赤で。
僕はこれから先、朝日の赤も夕日の赤も、一生血の赤としてしか見れない、そう思った。
お人好し……
でも、ありが