いつものように楓を後ろから抱っこしながら、ファッション誌のスナップを見ているひかり
ねぇねぇ、かえちゃんはどの子が好きー?
みなさんかわいいとおもいますが
その中でもタイプの子だってばー!
いつものように楓を後ろから抱っこしながら、ファッション誌のスナップを見ているひかり
じゃあさ、それぞれタイプの子を一斉に指さそうよ! ね? ね?
はあ
じゃ、いくよ? ……せーの!
この子ー! ……ってわたしだけかーい! たっはー!
んねーぇ、かえちゃんもやってよー! つれないなぁ
そういうところも好きだけどー! んぎゅー!
ひかりさん。まえから気になっていたのですが
ん? なになに?
ひかりさんはおんなのこがすきなのですか?
女の子が好き? んーそうだなぁ……
てっへへ、好きだよ!
やはり
だってかわいい子見てると幸せになるじゃん! 癒されるじゃん!
では、ひかりさんはかわいい人ならだれでもよいのですか
え?
かわいければだれでもよいのですか、と
かえちゃん……もしかして嫉妬? 嫉妬かな!?
していません
わー! かえちゃんが嫉妬してる! かわいい! 抱きしめたい!
ごかいですが。あともう抱きしめられてますが
でも大丈ー夫! わたしはかえちゃんがいっちばーん好きだからね!
* * *
ごくり……。あ、あやしいとは思ってたけど……
ひかりは女の子が好きなんだ……
思えば、ひかりはいつも楓にべったりだし、学校でも見るたび女の子に囲まれてる
ボディタッチも多い気がするし……!
ど、どうしようこれから……。う、ううん、どうしようってこともないんだけど……
そうだよ。うん。いつも通りに振る舞えばいいよね。ひかりはひかりだもんね
そうそう。何も変わらないよ。うん。何も変わらない……
うん……
* * *
――後日。
あ、唯ちゃーん! おはよー!
ひ、ひかり……!
お、おはよう……
うん! ねえねえ、唯ちゃん。今日ってこれから忙しい?
え? 別に、今買い物から帰ってきたところだから何もないけど?
じゃあ唯ちゃんち行ってもいーい?
……え?
* * *
ど、どうしよう……。ひかりが、わたしの部屋に……?
* * *
わー! かわいいお部屋ー! 意外だって言われない?
う、うん、でもあんまりわたしの部屋にくる人いないから……。空子くらいかな
そうなんだー。じゃあわたしは二番目の女だね!
に、二番目の女……!? や、べ、別にそんな、空子とわたしはそういう関係じゃっ……
そういう関係……? ってなにが?
え? う、ううん、何でもない……
ふーん
ねぇ唯ちゃん? 何か自分の部屋なのにさっきから落ち着かないね? どうしたの?
え? そ、そう? そんなことないよ……?
まるでわたしの方がリラックスしちゃってるみたい。あはは
よーし、じゃあ思い切って……たーーーっ!!
ちょ、ちょっとひかりっ?
んー! 唯ちゃんのベッドもふもふで気持ちいいー! いい匂いするー!
あ、あわわ……
くんくんくんくん!
あ、あわ、あわわわ……
ひ、ひかりったら……!
あれ、唯ちゃん? ……えっと、わたしまずかった、かな……?
あ、いや、べ、別にまずくはない、けど……。と、友達だし
ほんと? よかったー! じゃあもっともふもふしよー! 唯ちゃんの匂い、わたし好きだなー!
わ、わたしの匂い……好きなんだ……
うん! 唯ちゃんはどう?
わたし? わたしはその、自分の匂いはよくわからないし……
そうじゃなくて! わたしの匂いはどうかなって
ひ、ひひっ、ひかりの匂いっ?
うん。こないだシャンプー変えてみたんだ。どうかな?
ど、どうって……! わ、わかんないよ
ほら、唯ちゃん。こっちきて嗅いでみて? ほら、ぐいーっ!
ひゃっ! ひ、ひかり……強引だよ……
はい。髪の匂い嗅いでみて?
……ち、近いよ……。ひかり……
えー? 近くなくちゃ髪の匂い嗅げないじゃん
そう……だけど……
ね、どうどう? いい匂いする?
(すんすん)……あ、うん、すごくいい匂い……!
なんだか……わからないけど、どきどきする……
って、いや! わたし何言ってんだろ……?
本当? ちょっとオトナっぽい匂いにしてみて、自分に合うかなーって不安だったからよかったー!
う、うん、合ってると……思うよ
えへへ……。なーんか嬉しいなー。へへへー……
な、何? そんなにじろじろわたしを見て……?
こうして唯ちゃんとお部屋で二人っきりでいることが嬉しいなーって
わたしの部屋で……ふ、二人っきり……!
よいしょっと。ぴとっ
ひゃっ!?
あ、唯ちゃんって二の腕ひんやりしてるんだね。気持ちいいー
ひ、ひかり、そんな、急に触らないで……っ
えー? いいじゃん。わたしたちの仲だし
わたしたちの……なか、な、仲っ……!?
うん、そう。わたしたちの仲
……
……
……ねぇ唯ちゃん?
……は、はい
ぎゅってしていい?
ふぇっ!? ど、ど、どうしてっ!?
ふ、ふたりきりのへへ、部屋でっ! うら若き女子が、せ、正当な理由もなくぎゅぎゅ、ぎゅっていうのはっ……そのっ……!
えいっ!
ひゃぁぁぁあああっ!
わわ、ひ、ひかり……だ、ダメだよっ……!
……ほっとするなぁ
え?
ひかり? ……どうしたの?
わたしさ、いつも元気に見られるけど、本当はそうでもないんだ
つまらないことで怒ったりするし、悩んだりもするし、疲れたときにはぐたーってしちゃう。たぶん強い子じゃないんだろうな
だからこうやって誰かにくっついてるとほっとする
かえちゃんを抱っこしながら、本当はわたしが安心してるのかも。……秘密だよ?
うん……
初めてアイドルの世界に飛び込んでみて、わからないことがいっぱいだった。こんなに大変だなんて思わなかった
……留奈ちゃんにはいつも怒られるしー
留奈はまじめだもんね
だから、同じ事務所で、同じ学校に通ってる唯ちゃんがいてよかったなって
安心する
……ひかり、悩んでるの?
ううん? へーき。大変だけど、アイドルは楽しいもん!
そっか……。よかった
きっとプロデューサーや、みんなや、唯ちゃんのおかげだよ。みんながいるからわたしは頑張れる
ひかり……。わたし……何勘違いしてたんだろ……
唯ちゃん?
ごめんっ! ひかりっっ!
唯ちゃんっ!? きゅ、急に土下座!? なにごとっ!?
すいませんでしたっ!!
だからなんで!?
……もう、わけがわかんないや
でも、やっぱり誰かと一緒は楽しいな
これからもよろしくね! 唯ちゃん!