たまに楓は本当に中学生なのかと思ってしまう。
いつも熱いお茶を飲んでるし、つい縁側で猫を膝に乗せてのんびりしているお婆ちゃんを想像してしまう。
このこ、かわいいです
こっちのこもかわいいです
楓? 何を見てるの?
ねこの写真集をみています
猫の? 楓は猫が好きなんだっけ?
はい。ねこはいいです。しずかですので
静か?
はい。いっしょにいても気をつかいません
いぬはいつもあそびたがるので気をつかいます
おさんぽですか、とか、ボールですか、とか、えさですか、とか、気が気じゃないです
そのてん、ねこは気ままです。気をつかわず、なんといいましょう、ありのままの自分でいられる、そんなあいてです
まるで理想の結婚相手みたいに言うね・・・・・・
たまに楓は本当に中学生なのかと思ってしまう。
いつも熱いお茶を飲んでるし、つい縁側で猫を膝に乗せてのんびりしているお婆ちゃんを想像してしまう。
ねこは集会がすきです
猫の集会か・・・・・・まるで見てきたようなことを言うんだね
たまにさんかしますので
え?
さ、参加? えっと、猫の集会に?
はい
楓が?
いけませんか
いや、いけないことはないけど・・・・・・。て言うか、その、人間も参加できるんだ?
ねこはやさしいので
そうなんだ・・・・・・
きょうもこれから集会があります
そ、そうなの?
もうすぐ時間なのでいかなくては
* * *
それで、楓ちゃんが心配だからわたしに着いてきてほしいと?
そう・・・・・・なんだ
楓はミステリアスなところがあるから・・・・・・。もし、何か危ないことをしてたらと思うと心配で・・・・・・
うふふ、プロデューサーは優しいですね?
いや、ただ心配なだけだよ
それより、つかさをつき合わせてしまってごめん
あらら? 構いませんよっ? うふふ
えっと、何でつかさは嬉しそうなの?
・・・・・・プロデューサーは困ったらわたくしに頼るのですね?
え?
い、いや、どうかな・・・・・・。でも、そう、かもしれない
嬉しいのです! では、これからも困ったらわたくしに言ってくださいね?
絶対ですよ?
ん? あ、ああ、ありがとう。優しいね、つかさは
あ、見てください! 楓ちゃんのまわりに猫ちゃんたちが集まってきました!
プロデューサー。見えないようにもっと奥に隠れましょう
あ、ああ
みなさん、こんばんは
にゃーん。にゃーん
ごきげんですね。よかったです
にゃーん!
・・・・・・ちょ、ちょっと待って、いま楓会話した・・・・・・? 猫と会話したよね!?
プロデューサー? 落ち着いてください。わたくしだって猫ちゃんを見たら声くらいかけます
そ、そうなのか・・・・・・?
そうです。だからもう少し様子を見ましょう
ああ・・・・・・ところでつかさ、僕にくっつきすぎじゃないかな?
にゃーん! にゃーん!
なるほど。だからたのしそうだったんですね
にゃーん!
にゃーん
いま楓鳴かなかった・・・・・・? 鳴いたよね・・・・・・!? にゃーんって!
落ち着いてくださいプロデューサー!
わたくしだってたまににゃーんくらい鳴きます!
そ、そうなの・・・・・・? 女の子って鳴くんだ・・・・・・?
もう、いけませんよ?
プロデューサーは、自分の担当アイドルのことになるとすぐ取り乱すんですから・・・・・・
ご、ごめん・・・・・・
でも、わたくしも思い出したことがあります。・・・・・・ケットシーの伝説をご存じですか?
ケットシー?
はい。昔にお屋敷の書物庫で読んだことがあります。アイルランドに伝わる民話で、ケットシーとは猫の妖精です
ケットシーは二本足で歩き、人語を話します。普段は人間の姿に化けているとも言われます
猫の妖精界には王様がいて、人間のような階層構造があるそうです
猫の妖精か・・・・・・
今日は王さまはどうしたのですか
にゃーん・・・・・・
そうですか・・・・・・それはざんねんです
・・・・・・あれはよいねこさんでした
・・・・・・いま楓、王様って言わなかった・・・・・・?
・・・・・・言った、かもしれません
まさか・・・・・・いえ、そんなはずは
つかさ? どうしたの?
・・・・・・はい。ケットシーに関する民話はこういうものです
満月の夜に猫たちがお葬式をしていて、”猫の王様が死んだ”と人の言葉で言うのです
それを一人の農民が見ていて、家に帰ってそのことを妻に話すと、暖炉の前で寝ていた飼い猫が飛び起きます
そして言うのです。”それなら次は自分が王様になる番だ”
猫はそれきり家を飛び出して、二度と帰ってこなかったと言います
そんな・・・・・・
ふふ、にゃーん
にゃーん。にゃーん。にゃー。にゃー
にゃー
楓のまわりにどんどん猫たちが集まってくる・・・・・・!
まるで新しい王様を迎えるみたいに・・・・・・!
楓が・・・・・・猫の妖精・・・・・・?
プロデューサー! 申し訳ありません! わたくしの話は忘れてください!
楓ちゃんは楓ちゃんです!
変だとは思ってたんだ・・・・・・
楓は不思議な子だし、年の割に大人びてるし、この間は急に猫耳に興味を持ち出すし・・・・・・
プロデューサー!
楓・・・・・・。最初はアイドルには向かない子だと思ってた
でもそんな楓が毎日一生懸命レッスンして、だんだん歌も踊りも板についてきて・・・・・・
表には出さないけどすごい頑張り屋なんだ。喧嘩ばかりする留奈とひかりの間を取り持ったりもして・・・・・・一番年下なのに
これからも一緒に頑張っていこうって約束したんだ・・・・・・
プロデューサー・・・・・・
楓・・・・・・
きょうはすこしひえますね
にゃーん
でもみなさんといっしょならあたたかいです
にゃーーん!
では、いきましょうか
……もうだめだ。楓っ!!
プ、プロデューサー!
?
待ってくれ楓!! 行かないでくれ!!
一緒にアスタリスクライブを目指そうって誓ったじゃないか!
プロデューサー
そんなにあわててどうしましたか?
* * *
わたしがねことはしりませんでした
ご、ごめん・・・・・・
わたしはようせい
う・・・・・・
しかも王さま
か、返す言葉もない・・・・・・
恥ずかしいよ・・・・・・。楓がどこかへ行ってしまうんじゃないかと思ったら気が気じゃなくなって・・・・・・
そうですね。プロデューサーはどうかしています
わたしはただねこさんたちとなかよしなだけなのに
面目ない・・・・・・
わたしはどこへもいきません。みんなとずっといっしょです
楓・・・・・・
もしわたしをどこかへつれていけるとしたら、それはプロデューサーだけです
え?
つれていってください。きらきらした夢のステージへ
・・・・・・!
わかった! 約束する! 必ず楓を夢のステージへ連れて行く!
よろしくおねがいしますにゃーん
……え?