ハルの意識が戻ったのは暗闇の中だった。
ハルの意識が戻ったのは暗闇の中だった。
ハルはダナンが酒場に顔を出した事まで記憶にあったが、それ以降の記憶がない。
ここはどこなのか? なぜここにいるのか?
そんな疑問は瞬時に脳裏から離れ、どうやらベッドで寝ている事に気付く。
何か顎が
ちょっと痛いっすけど、
取り敢えず寝るっすーzzz
あまりの寝心地の良さに、とりあえず枕に顔を埋めるハルだった。
……きろー。
おーい、起きろー!
ハルー!
もう朝だぞ~。
はへ?
は……ああ、ジュピ、ワ~ア。
ハルが目覚めると、部屋には太陽光が広がっており、目の前にはジュピターが居た。
お互い酷い目にあったな。
あ~、そっすねぇ。
じゃあ、おやすみっす~zzz
あ! すっげぇ刀!
刀!?
刀と聞いて、ハルは飛び起きる。その脇には、ハルが持参した愛刀・鬼義理(オニギリ)を愛で上げるジュピターがいた。すぐにジュピターの作戦だと気付いたハル。ジュピターのしてやったりと言わんばかりの顔に、朝の挨拶を返した。
で、ここどこっすか?
やっぱ覚えてないよな。
オイラが一から説明してやるよ。
どうやらダナンの鉄拳制裁を受けてから気を失ってたらしい。そして結論から言えばここは訓練場内の宿泊場所。
なぜここにいるかと順を追えば、昨日酒場で飲んだリアという女性。彼女は訓練場の教官で、時間外にも係わらず受付を済ましてくれたのだ。そしてこの四人部屋まで運ばれたらしい。それから、実際の説明は今日の朝、そう今からとの事だ。
起きてからも騒々しいな。
四人部屋にはもう一人居た。影のある不機嫌そうな男で、ハルとジュピターを鬱陶しそうに睨み付けた。
うるさくしてすまなかったっす。
自分、ハルっす。
ハル=ビエント。
よろしくっす。
ごめんごめん、オイラは
ジュピター=スカーレット。
よろしくな。
二人は素直にうるさくした事を謝り、名乗り挨拶した。影のある男は、鋭い目つきを二人に向けた。
フン。
昨晩、余程騒がしかったのか、影のある男はそのまま部屋を出て行ってしまった。友好的ではない態度にジュピターは少し腹を立てる。
なんだあいつ?
暗い奴だな。
まぁまぁ。
きっとうるさくて
眠れなかったんすよ。
もう一度謝ってみるっす。
そうだな。
じゃあ、オイラ達も
講堂に行くか。
そこで説明があるみたいだぞ。
わかったっす。
いっぱい訓練して
強くなるっすよぉ!
寝室を出た二人は、長い廊下に出た。ハルはもちろんジュピターも講堂がどこか分からなかった。
適当に歩こうとぶらついた先で、ダナンとリュウ、そして野性児のタラトに出会った。
おーう、おはよう。
俺様の鉄拳で
よく眠れただろう。
……ハ、ル。肉……。
顎、大丈夫かぁ~。
昨晩の怒りもスッパリ忘れたダナンと、腹ごしらえしたそうなタラト。リュウは相変わらずのんびりした口調だ。
講堂の場所を知っていたリュウ達に連れられて、無事に到着出来た。
講堂に入るやいなや、口をぽっかり開けて天井を見上げてしまう。ドーム状になったその建築は高い技術を見せつけているかのようだ。柱の装飾は華美すぎず、且つシンプルで美しい。
そして講堂には、既にメナとユフィが来ていた。
ハル! 良かったー、
間に合ったんだね。
おはようっす、メナ。
余裕っすよ。
昨日、汗だくになって
皆で探したのよ。
まぁ、気にしないで。
気にするよ、その言い方。
リア教官に免じて
今回は不問にするわ。
次、勝手な真似したら……
は、へへ。
なんだか、申し訳ないっす。
怒りをギリギリのところで抑えているユフィは、語尾を濁らせた。それが余計に恐ろしく聞こえ、ハルは縮こまってしまった。
…………
影のある男が講堂に静かに入室してきた。ハルは手をブンブン振り、満面の笑みで声を講堂に響かせた。
やっぱり、今日から
訓練生なんすね。
昨日はうるさくして
すまなかったっす。
話しかけてくるな。
お前達と仲良く
するつもりはない。
愛想を振りまく気などさらさらないのが伝わってくる。
まぁまぁ、そう怖い顔する
もんじゃないっすよ。
楽しくやるっす。
うっとおしいぞ。
俺に関わるな。
ここまで言われたら普通、関わらないものだが、ハルはまだ何かを言っている。煙たがる影のある男がだんまりを決めこみ着席した時、もう一人、講堂に姿を現した。
はぁ~、
間に合って良かったです。
あ! えとあの
アデリシア=ブライトマンです。
アデルとお呼び下さい。
宜しくお願いします!
肩で息をしているのは、ファムンテンの店でタラトに料理を横取りされた女性だった。誰も聞いてもいないのに、名乗り挨拶する。
はーい、それじゃあ
アデルちゃん。
着席して貰っていっかな~。
てか、立ったままでも
良いけどね。
あ!
す、すみません。
すぐに座ります。
アデルの後ろから現れたのは、リアだった。どうやら説明をするのもリアの仕事のようだ。
あ、ハルもちゃんといるし。
意外に頑丈なのね。
昨日は世話になったっす。
今日からもよろしくっすね。
元気でよろしい♫
んじゃ、パパーッと
やっちゃおうか。
軽いノリのリアは講堂の演台に進み、訓練場ルールの説明を始めた。