時田

……

時田

参ったな。
それで、俺がなんだって?  

数奇

……

時田

死体遺棄犯?
アリバイでも調べるのか?

時田

聴取?

任意なら俺は帰るぞ。ただでさえこの仕事で目が疲れてるんだ

数奇
時田

証拠はないだろ?


時田はため息をついて立ち上がった。

夜暮

待ってくださいよ

時田

……どいてくれ、夜暮

夜暮

時田さん、『他の皆さんにも協力していただきました』ってさっき聞きましたよね?

戸が開き、出てきたのは消名だった。
その後ろにも数人が控えている。

消名

俺達は全員、こいつの説明を聞いてお前を怪しんだ。

……今の反応で確信した。
お前、実行犯かはともかく、何か知ってるんだな?

時田

……お前、こんな言葉を信じたのか?

消名

『お前』じゃない、消名だ

夜暮

時田さん、良いこと教えてあげますよ


夜暮は笑顔を保ったまま時田の正面に回り込んだ。

夜暮

捜査中に大事なのは物証じゃない。

大事なのは、疑惑ですよ。
頼りない疑惑をブツに変えるのが僕ら刑事の仕事なんです。証拠しか相手にしない鑑識と違って、送検するとき証拠があれば良いんです

夜暮

だから僕らは時田さんを疑いますよ? 逃げさせません

時田

ッ……

時田

……分かったよ
どこへでも連れてけ

……ああ、そういや

時田

左のただむきなんだろ?
何をしたいか知らないが、どうせアンタの力じゃ放してくれねえよ

消名

あいつ、変なことを言い残していたが……

夜暮

ケシナさん

消名

「ケシナ」じゃないが、何だ?

夜暮

『こいつ』じゃなくて、数奇さんですよ

消名

ああ……
覚えておくよ、女帝の駒共

夜暮

……って、数奇さん?

数奇

すみません……


数奇は吐きそうな顔をして近くの椅子に座りこんでいた。

数奇

いつも、こういう時は……こうなるんです

夜暮

まあ一般人にはきついかもしれないですけど……

消名

クイ……五日町警部も、なんで一般人使うんだ?
どう考えても危険だろう

夜暮

そういえば、なんで数奇さんは捜査に参加とかしてるんですか? 気分悪くなってばかりに見えますけど

数奇

……すみません

数奇は無理に笑顔を作った。



数奇

夜暮さんには、話せません

五日町

今日はこれで終わりだ。
次はまた半月後になる

芳賀 駿人

寂しくなるな

五日町

お前にとってはたいした時間ではないだろう

芳賀 駿人


芳賀は、ちょっと口の端をしかめた。

芳賀 駿人

環ちゃんつれないなあ。
そういうところも素敵だけどさ。

ねえ……

芳賀 駿人

一度で良いから、呼んでくれないかな? 僕のこと

輝夜樹照、って

死刑囚への捜査中に本名以外の名を言うつもりはないな、『芳賀駿人』



懺悔室としての機能を持つ部屋には、一見装飾的にも見える物がいくつか置かれている。


聖書。

燭台。

座り心地の良い椅子。


しかしここは、厳重な塀の中だ。

芳賀 駿人

愛しの数奇君によろしく。
壊れないように、肌身離さず守ってあげてね

僕が引き取りに行く日まで、さ

‡3 君じゃはなせない ーⅷ

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