これ、は、……何?


 川沿いに並んで揺れる、柳に似た、しかし枝の色は確かに緑ではない樹木の写真に、思考が止まる。

『枝垂れ桜』だな


 固まってしまったセツナの手から写真を抜き取った叔父の笑いに、セツナはもう一度、叔父の手に渡った桜色をまじまじと見つめた。

村の古老は『糸桜』と呼んでいたな


 春になると、叔父は桜を撮りにあちこちに出かける。それが、セツナを引き取ってくれた叔父の、趣味の一つ。

また、撮りに行くか


 粉雪が舞う硝子窓の向こうに視線を移し、叔父が頷く。

付いて来るか?


 色の所為か、桜はあまり好きではない。

でも、
……叔父と、一緒なら


 まだ叔父の手の中にある、風に揺れる細い枝の写真を見上げ、セツナは小さく頷いた。

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