由宇と秋帆に連れられるまま、カフェに到着した。

神原 秋帆

で、どうよ

二ノ宮 舞花

えっ?

羽邑 由宇

どうなの?

二ノ宮 舞花

……えっと

ふたりの笑顔がとても怖い。

神原 秋帆

話してごらんよ、舞花?

羽邑 由宇

ぜーんぶ話したら、きっと、すっきりするよ?

二ノ宮 舞花

すっきり、したいわけじゃないっていうか……

煮え切らない私を見兼ねてか、由宇が水を飲んでふぅ、と息を吐いた。

羽邑 由宇

ひとまず、なにか注文しようか

神原 秋帆

……ですな

そう、席に着いた途端に尋問が始まったのだ。私も思わず息を吐いて、メニュー票を手に取った。

神原 秋帆

此処ね、カプチーノが美味しいんだよ

羽邑 由宇

そうなの!?俺甘いの好きだから楽しみだなぁ~

神原 秋帆

甘党なんだ!?意外だ~

羽邑 由宇

そう?俺苦いの駄目だからブラックとか飲めないんだよね、男としてはかっこつかなくてあれだけど

神原 秋帆

デートってふたりが楽しくなきゃ意味ないんだから、苦手なもの無理して飲む必要ないよ

羽邑 由宇

神原、いいこと言うねぇ

ふたりが話している間に、私はカプチーノとラテの間でゆらゆら揺れ動いていた。

二ノ宮 舞花

どっちにしよう……

神原 秋帆

舞花、決まった?

二ノ宮 舞花

まだ……カプチーノと、ラテで迷ってて

神原 秋帆

この前ラテ飲んでたし、カプチーノにしなよ

二ノ宮 舞花

じゃ、カプチーノで決まりかな

羽邑 由宇

みんな決まったね、じゃ、注文して本題に入ろうか

店員さんを呼び、注文を済ませる。みんなの分が揃ったところで、由宇が話を切り出した。

羽邑 由宇

俺さ、今日の朝に舞花と会った時から思ってたんだよ、なにか花楓さんの入院とは別のことで悩んでるんじゃないかって

神原 秋帆

深刻そうな顔で羽邑に相談されて、いつもより注意して舞花をみてたけど、うん、確かにただ心配で、って感じじゃないなって思ったよ

二ノ宮 舞花

心配かけて、ごめんね……

羽邑 由宇

それは舞花が気にすることじゃないよ。でね、俺はその理由が知りたいんだけど、どうかな、話してくれる……?

……大丈夫、ふたりはありえないと切り捨てたりなんてしない。きっと、受け止めてくれる。

深呼吸をひとつ。そして私は、週末に訪れた『時間屋』のこと、訪れることになったそもそもの経緯をふたりに話した。

羽邑 由宇

なるほど……。そんなことがあったのか

神原 秋帆

その時屋って人に事情を聴けたらいちばんだけど、話してくれないだよね、ケチな奴

二ノ宮 舞花

……私が時屋さんと契約すれば、きっと

羽邑 由宇

それは、駄目だよ!!

二ノ宮 舞花

えっ

由宇が大きな声を出すのは珍しい。秋帆も目を丸くしていた。

羽邑 由宇

……俺さ、その、時間屋のことを正蔵さんから聞いたことがあるんだ

二ノ宮 舞花

そうなのっ!?

神原 秋帆

まじか!羽邑が知ってるなんて……。で、えっと、その、正蔵?さん?ってさ、誰なの?

羽邑 由宇

あっ、ごめん、正蔵さんは、舞花のおじいさんだよ

二ノ宮 舞花

時屋さんは、おじいちゃんも契約者だって、言ってた……。由宇、おじいちゃんは、なんて言ってた?

羽邑 由宇

時間屋は……

羽邑 由宇

命を対価に時を売るため言葉巧みに人を騙す、道化師だ、って

第六話へ、続く。

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