―正一位石倉稲荷神社―
―正一位石倉稲荷神社―
赤い鳥居の前にたどり着く良太郎一行。
あー着いた! ビビり神社
おお、いかにもパワースポットって感じだな! テンション上がるわ~
……そうか? 何かすげえどんよりしてねえ?
はあ、どこがだよ? よし、じゃあ一番最初に階段上がったやつがみんなのお賽銭おごりな!
わー、面白そー。やるやるー
その発想罰当たりじゃねえか? それにのぞみの教育上良くないっつーかさ
何だよノリ悪いなあ。ワルが何ウダウダ言ってるんだよ!
益荒男兄ちゃん
ん?(何かやな予感)
まわりの意見に合わせるのも大事だよ
(またいつものパターン!)うぅ、わかったやりますぅ!!やりますからもう俺をみじめにしないで~!
はい、よーいスタート!!
一斉に石段を駆け上がる三人。
―同・境内―
はい、益荒男がビリ決定!!
くっそー、俺走るのだけは昔から苦手なんだよな
益荒男兄ちゃん。大丈夫?負けたのにお金払うなんて可哀想だからのんの貯金箱から……
不良に情けはくれるな!!! っつか俺がさっきから気にしてるのはよお、そういう事じゃなくてなんつーか、ここの神社すごい違和感かんじない?
さっきから何なんだよお前。何かおかしい事があるんならはっきり言えよ
と、振り返る良太郎のリーゼントがL字に曲がっている。
つか、お前です! どうしたよその頭、いつからそんなんなった!? 明らかに異質だろ!
すごーい。サンタさんのえんとつみたい~
マジで? 俺、のぞみが入ってきてくれるなら喜んで良い煙突になるよ
いや、意味わかんないから……そういや、のぞみ。お前さっきここの事ビビり神社って言ってたよな? それってどういう意味?
うーんとね。お父さんは嬉しそうに話してたんだけどね、のん途中で怖くなって耳ふさいでたからよく覚えてない
え、ちょっと待ってそれって……うん、少しググらせてもらえるかな?
益荒男のスマホが何故かつかない。
あれ? つか俺のスマホ点かねえんだけど?
貸せよ
カチカチのリーゼントでスマホを叩き壊す良太郎。
わー! おいテメエ何するんだよ、この野郎! 冗談にも程が……
……
良太郎の目つきが何かにとりつかれたように虚ろ。
うー、死ねー。死ねー
急に益荒男の首を絞め始める。髪型はどんどん直上していく。
まさか、こいつ俺よりも憑依体質!? とにかく止せ、俺だよ益荒男だよ親友の顔忘れちまったのかよ?
……シンユウ? 今ハ“死ニユク”ッテ感ジダナ?
た、たしかに
幽霊に取りつかれてるのに上手いボケするな! のぞみも感心しないで!
は、いけない! 良太郎兄ちゃんこんなバカなこと止めて!
……キスシテクレタラ
は?
は?
キスしてくれたら……こいつ……放してもいいよ
ええ、どうしようかな
何めんどくさい彼女みてえな駆け引きしてるんだ! つーかお前絶対正気だろ? 憑依詐欺だろソレ?
……それで良太郎お兄ちゃんが元に戻るなら。のぞみ、いいよ?
……ヨシ
小さくガッツポーズしてるんじゃねえ! のぞみ、コイツに近づくんじゃねえ! いろんな意味で危険すぎる!!
すると良太郎の背後からバシャッと大量の盛り塩を巻く音と念仏が聞こえる。
悪霊退散×5!
ぐぎゃああ!
益荒男を突き飛ばして石畳を転げ落ちる良太郎。
お兄ちゃ~ん、大丈夫!?
大丈夫だ。うまくリーゼントがクッションになって奇跡的にかすり傷一つねえ
まだだ、抜けきっていない
とどめを刺すように馬乗りになって塩をかけまくる謎の男。
悪霊退散×5!
見かねて割って入る益荒男。
助けてもらっておいて何ですが、もうその辺にしておいて下さい! その勢いは悪魔祓いとか関係なく普通にやり過ぎっす!!
たしかに。すまない、取り乱した
……お父さん
のぞみ!?
お父さーん
駆け寄って抱き合うのぞみと漢。
ええ、何この急展開、ついていけねえんだけど……
……あれ、俺。口から血ィ出てんだけど…痛ぇや
〈脚本・監修〉橋本ピッツァ(敬称略)
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