―アッポーホテル部屋内―
―アッポーホテル部屋内―
三人一部屋で修学旅行の夜的なノリで話をしている良太郎一向。
そういや、益荒男のタイプってどんな子? 俺は年下が好みだけど?
だろうな、いささか行き過ぎた感あるけどな。てかなんだよ。急に女の話なんか
いや、そういや東京にいても全然益荒男に女の気配が無いからさ。どうなんかなあって思って?
のんも知りたい~
女なんて……いまは興味ねえよ。面倒くさいだけだろ。金かかるし
そんな事もないぞ。お金なんてなくたって好きな人と一緒なら幸せだぜ?
いいか、俺とのぞみをよく見てみろよ?
こうやって手をつないだ後、ぎゅっと抱き寄せて目と目で会話した後に髪を撫でて、あごをグイッと自分の口元に寄せてからの……
わー!! わかった、ちゃんと言うからその先はよせ! ……し、強いていえば気立ての良さ、かな。古風な感じが好きかも
三歩下がって歩く的な?
急に奥ゆかしくままごとのようなしぐさを始めるのぞみ。
三つ指立てて、『お帰りなさいませ、ご主人様』って言うやつ
おお、のぞみそんな古い感じの良く知ってるな
のん、おままごと大好きー! お風呂とお夕食どちらにします? それともわ・た・し?
ぶふう!
ぶふう!
急に鼻血出してよろめく良太郎と益荒男。
お兄ちゃんたち大変! 救急車!!
いや、大丈夫だのぞみ。これはその……男の条件反射っていうやつだ
ああ、さすがの俺でも今のセリフは夢があり過ぎた。つか、のぞみ意味わかって言ってる?
うんとね、お父さんのベッドの下にあった変なマンガに載ってたの。あのね、裸で寒そうなのにエプロンだけした女の人が急に玄関で三つ指立てて今のセリフを言ったんだよ。寒くないのかな?
ぶふう!
ぶふう!
……それはその、あれだ。な?
のぞみがかけてやれば良いんじゃないかな、服
えへへ、今度見かけたらそうするね!!
お、おう……
好奇心は最恐の凶器だな……
~翌日~
―大通り・交差点―
大通りを歩く良太郎一行。
のぞみの親父さんちってどこ? 意外に函館広くて
たしかに。ちょっと舐めてた部分あるかも。とりま、住所教えてくれる?
ごめんなさい。お父さんからお手紙は来てたんだけど、まだのぞみ読めない漢字多くて……よく覚えてません
マジか……
函館なのは間違いないんだよな?
うん
じゃあ、これで見覚えあるところでストップって言って
益荒男がグーグルマップを開いてのぞみに見せる。
あ、ここに一回お参りに行ったことあるよ!
よっしゃ!そこに行けば何かわかるはず!!
○○神社か。ちょうどこの近くからバス出てるっぽいぞ
それじゃあ早速
レッツゴー!
―バス内―
わーい、のん乗り物も大好き~
よし、一気に流れきた。じゃあ、のぞみと俺は相席で益荒男はつり革な!
お前ホントあからさまな
じゃあ、じゃんけんで決めよう?
おお、いいねえ! それなら益荒男もペラペラ言い訳できねえしな!!
皆まで言うな! 喧嘩上等、受けて立つ!!
せーの……
グーチーグーチーあったひと!
グーとパーに別れましょ!
グッパーッ、ジャス!
ん??? いま何て?
ん??? いま何て?
ん??? いま 何て?
俺のところではこれ普通だったけど? つうか“ジャス”って何よ?
し、知らねえよ! 俺の地元じゃ昔からこう言うんだ。理由なんてねえよ!!
益荒男兄ちゃん。恥ずかしくないの?
だから俺だけ異端の目で見るな!
じゃんけんで地元オリジナル掛け声で揉めちゃうあるあるでした!
……
そうこうしているうちに腰の曲がった着物のおばあさんが入ってくる。
おい、お前ら席譲れよ
お、おう。だな、すまん気づかなくて
ごめんなさい。どうぞおばあちゃん
おばあさんのためだけかと思いきや、なぜか益荒男も相席で座って、頬を染めながら仲良さそうに話す。
ってお前も座るのかよ!? オイ!
地元の方ですか?
お荷物僕が膝に持ちましょうか?
おやつ食べます?
あ、そうだ!
もしよかったら肩凝ってたら次のバス停まで僕が揉みましょうか?
職業柄っつーかポジション的に握力には結構自信ある方なんですよ
え、え? は、はぁ……
一方的におばあさんにまくしたてる益荒男に動揺する良太郎とのぞみ。
……もしかして益荒男兄ちゃんのタイプの人って
かなり年上? っていうかご年配?
〈脚本・監修〉橋本ピッツァ(敬称略)
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