また太陽が昇った。彼女がこの街から、白井空の目の前から消えて、どれだけの日々が経っただろうか。

あるいは。まだ3日と経っていないかもしれない。

けれど、その事実を知る者はもういなかった。

* * *

白井 空

なあ久美。これでいこうと思うんだけど、どう思う?

久美

ふむふむ。私はこれでいいと思うのです! でもお兄ちゃん、急に何故またストリエに応募しようと思ったのですか?

白井 空

いやそれがさ、俺にも分かんないんだわ。ただ、誰かと約束したような気がしてさ。それも、とっても大切な人と

久美

大切な人!? それは、私への愛の告白と受け取っても!?

白井 空

何でそうなるんだよ。あ、はるかさんはどう思う?

はるか

ええ。私ももちろんОKですよ。久美お嬢様。お二人の式にはぜひ私も招待してくださいね

白井 空

いやいや何の話をしてるんだよ!? 俺のこの作品の感想を聞いてるんだけど!?

千冬

ねえちょっとあんた。さっきあんたの部屋に行ったらベットがピンクになってんだけど。いつからそんな趣味を持ったわけ? わたし達じゃなきゃもう口きいてもらえないレベルよあれ

白井 空

何勝手に人の部屋に……っ!? てかあれは折れも気付いたらなってて。でも何だか変えちゃいけないような気がしたから

千冬

ああ。つまり眠れるもう一人の僕がついに目覚めたと?

白井 空

だから違ううて。はあー。もういい俺先に学校行くからな

言い残して、白井は一人先にアパートを出た。残った3人はそれぞれ思い思いに言葉を呟く。

久美

それにしても、お兄ちゃんは一体どうしてあんなに元気になったんですかね?

はるか

良い事じゃないですか。すっかり以前の様に元気になられて

千冬

まあ。やっと「おかえりなさい」って感じよ。ね、清納?

はるか

千冬様。清納とはいったい誰のことで?

千冬

え、あれ? 何か分からないけどそんな子がいたような気がしたんだけれど

久美

あれじゃないですか? お兄ちゃんの書いた小説の主人公の女の子です

はるか

確かにご友人から清納と呼ばれていましたね

千冬

そうかもしれないわね。ってああ。もうこんな時間!? 私も早めに行かないと。じゃあね

このアパートの1日は、今日も平和に始まった。

* * *

宮永

ねえねえ白井君。学校にパソコン持ってきて何してるの?

白井 空

静かに! 休み時間でも先生に見つかったら没収なんだから、あんまり騒ぐなよ宮永

宮永

ああごめんごめん。っで、もしかしてエッチなサイト見てたりしないよね。学校でまで

白井 空

するかよそんな事。いいか、誰にも言うんじゃねえぞ? ストリエってサイトがあるんだけど、そこに小説を投稿するんだよ

宮永

そういえば今回新たに生まれ変わったっていって『転生コン』やってるね

白井 空

え? 何で知ってんの?

宮永

何でって、そりゃ私も使ってるし。投稿だって以前のストリエの『天才コン』とかにも参加してるからね

白井 空

え、嘘!? まじで? じゃあ今回の『転生コン』にも?

宮永

もう応募したし作品も完結したけど。え? 白井君まだなの? 締め切りって今日まででしょ?

白井 空

だから学校までパソコン持ってきてんだよ。でも話しは出来てるんだ。後はそれを打ち込んで投稿するだけ

宮永

そっか。頑張って。でも意外。こんなに近くに同じ仲間がいるなんて。これからはお互いライバルとして一緒に頑張ろうね

白井 空

ああ。よろしく頼むよ。じゃ、俺はマジでギリギリだからまた。ごめんな

宮永

まあ、君がストリエしてるって前から知ってたけどね

* * *

千冬

ねえちょっと。まだやってんの? もうすぐ12時よ?

白井 空

あとちょっとなんだ。あとちょっとだから待ってくれ

千冬

もう、しょうがないわね。ほら、片手で食べられるようにおにぎり作ったから頑張りなさい

白井 空

マジか! うおおおおおおおおっ!! らすとすぱーとだあああああ!!!

千冬

ふん、はしゃぎ過ぎよ

白井 空

よし! 終わったぞ千冬。これで完成だ。ありがとう。俺がもう一度この作品を書きあげられたのも、お前のおかげだ

千冬

そ、そう? それなら良かったけれど。それにしても、お疲れ様。それと、お帰りなさい、空

久美

ふふふ。やっと二人とも仲直りできたみたいですね

はるか

そうですね久美お嬢様。二人ともとっても幸せそうです。では、あちらもお疲れのようで早速仲良く眠ってらっしゃいますし、お布団をおかけしたら私たちも寝ましょうか

そうして1日がまた終わっていく。

窓も閉まっていて風はないけれど、机の上にあった原稿用紙がひらりと待って、白井の手の上に落ちた。

そこには、こんな言葉が書かれていた。





 

〔終〕一日の日の若菜は、旅立つ

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