俺は碧から本を受け取った。
可愛らしいキャラクターの描かれた表紙の児童書のようだ。
……桜子ちゃん
碧ちゃん、なあに?
……はい
俺は碧から本を受け取った。
可愛らしいキャラクターの描かれた表紙の児童書のようだ。
――『転生』についての本
ぱっと見た感じだと、あまり『転生』とは関係なさそうだが……。
昨日、桜子ちゃんと麗花ちゃんが『転生』について何か話しているのを聞いたって言ったよね
…うん
よくこの本を借りては、二人集まって一緒に読んでいたから
――その時の本、わたしずっと持っていたの
どうして?
ある日この本を借りに来ることがなくなって、桜子ちゃんが何度も借りるくらいこの本は面白いのかなって…気になって今度はわたしが読んでいたの
とっても面白い本だった!不老不死の魔王に勇者は勝ち目がないと思って悲しくなったけど…まさかあんな方法で魔王を無力化するなんて!
――あんな方法って?
…桜子ちゃん、読んだことあるでしょう?
あー…あはは、わたし忘れっぽくて~
――転生よ
転……生…
…わたしってバカよね。桜子ちゃんはただもう一度この本を読み返したかっただけよね。だってこの本、とっても面白いもの
あの時、二人がこれで転生できる……とか話していたから、ついつい本気にしちゃったわ
転生できる…?二人は転生しようとしていた…?
まぁとにかく…はいこれ、ちゃんと渡したからね
うん。ありがとう、碧ちゃん
…………
貸し出し期間は二週間よ。忘れないでね
碧はそう言い残し、自分の席へ戻って行った。
――話は勝手に聞かせてもらったぞ!
うおおおいっ!?お前そんなところに!?
いつからいたのか、麗花はカーテンを広げて姿を現した。
ついに手に入れたな、本を!…これはかなりいい手がかりになるかもしれん
放課後、僕の家――もとい麗花の自宅へ来い。そこで読もう
いいけど…そんな急に行って大丈夫なのか?
問題ない。実は、また城ヶ崎家で新たに麗花についての情報を見つけてな、それも見せたい
ほほう…。お前、他人の家に対する抵抗がほんとねぇな……
ない!むしろ好奇心しかない!
……
――楽しそうだなぁ…。
あ、もう授業始まるのか。
…ってか、情報集めもいいけどお前宿題やったか?
――あ。
あらあら。も~麗花ちゃんったら~。仕方ないから、わたしのノート、貸してあ・げ・る♡
か…借りずともすぐ解けますわ!
……ふっ。
初めて、麗花に勝てたような気がした。