翌日午前9時頃、優咲は彼と出会った交差点に向かっていた。
彼がどうしてこの場に留まっているのか、転生したくないと思っている理由は何なのか・・・それを彼の口から訊きたかった。
そして彼の名前を呼びたかったのだ。もう忘れたりしないように。
そして単純にもう一度彼と会いたい。そんな想いもあった。
そう思っているせいか自然と速足になる。
思っていたよりも早く着きそうだった。
そうして交差点が目前に迫った頃、ふと優咲は彼と出会ったあの場所に人だかりが出来ている事に気付いた。
翌日午前9時頃、優咲は彼と出会った交差点に向かっていた。
彼がどうしてこの場に留まっているのか、転生したくないと思っている理由は何なのか・・・それを彼の口から訊きたかった。
そして彼の名前を呼びたかったのだ。もう忘れたりしないように。
そして単純にもう一度彼と会いたい。そんな想いもあった。
そう思っているせいか自然と速足になる。
思っていたよりも早く着きそうだった。
そうして交差点が目前に迫った頃、ふと優咲は彼と出会ったあの場所に人だかりが出来ている事に気付いた。
何だろう・・・まさか事故・・・とか!?
そう思うと居ても立ってもいられなくなって、思わず走って集団に近付く。
しかし付近に事故車がある訳でも無く、救急車やパトカーも止まっていなかった。
・・・あの
近くの男性に声を掛ける。
話し掛ける事が怖いという思いもあったが、それ以上にこの人だかりの意味がわからない方が怖い。
小さな声で相手に聞こえているのかどうか優咲は少し不安だったが、どうやら大丈夫だった様子だ。
はい、俺に何か?
そう優しく声を掛けてくれ、安心する。
あの・・・この人だかりは一体何なんでしょうか?
ああ、一般の人はわからないかも知れないね
男性はそんなように言った後答える。
ここに集まっているメンバーは・・・皆同級生なんだ。
10年前の幸花(こうか)福祉大学2年生
・・・10年前の大学2年生?
普通なら何期生と言いそうな物だが、そうでない事を優咲は不思議に思う。
それを男性も察したようで、話を続けた。
ああ。10年前の今日、18日にこの場所で事故に遭って亡くなった・・・近衛勇人の同級生だよ。
30歳の同窓会をやる前に・・・皆で勇人に会いに来たんだ
!
聞いたばかりのその名に優咲は驚く。
・・・あの、私・・・その事件を追っているんです
どういう事?
興味本位・・・という訳でも無さそうだな?
怪訝そうに問い掛けて来る男性に優咲は自分の事を話した。
結果的に友人の命を奪った優咲に対し、もしかしたら良い感情を抱かない可能性もある。それもわかっていたが、話さずにはいられないと思った。
・・・・・・・・・・
男性は優咲の話を聞いて少しの間沈黙していたが、やがて静かに呟く。
・・・そうか、君が
それから再び沈黙したが、突然声を張り上げた。
勇人!御前が命を懸けて守った彼女は元気にここに居るぞ。
良かったな
!
優咲は驚くが、その言葉に続いた。
・・・はい、ちゃんとここで・・・何とか生きています
2人の言葉に集まっていた皆が驚いたように優咲達に注目する。
突然群衆の注目を浴びて怖い気持ちもあったが、毅然と事故現場を見据えて立ち続ける。
そんな彼女の様子に心を動かされたようで、近衛勇人の友人だった人々は次々に優咲を囲った。
貴女が?幾つになったの?
もう少しで15です・・・・・・
もう少しって事は・・・誕生日が近いの?
はい、10月21日・・・3日後です
2人の質問に答えれば更に注目は集まる。
勇人と同じじゃないか!
運命的な話ね!!
・・・まさに勇人の命を奪った者に相応しい誕生日だな
だから勇人は代わりに死んだって言うの?
好意的な言葉もそうでない言葉も浴びる。
しかし一つ一つ受け止めたくて、優咲は最後まで俯かなかった。
・・・あの・・・近衛勇人さんの生前のお話を・・・聞かせて頂けませんか?
命の恩人の事・・・ちゃんと知りたいんです
数分経って落ち着いた群衆の中、優咲は静かに問い掛ける。
現場は相談する声で再び騒がしくなった。
少しだけで良いんです・・・どうかお願いします
再び願い出た優咲に漸く口を開いたのは先程話していた目の前の男性だった。
わかった。勇人の為にもなる気がするから・・・俺が話すよ。
勇人にも聞かせてやりたいから・・・この場で構わないね?
・・・はい、すみません・・・ありがとうございます
お礼を言いながらお辞儀をした優咲に男性は一度頷き、周りの他の皆に声を掛ける。
・・・という訳だから皆はここで一端解散。
昼から同窓会だから遅れて来るなよ~?
御前こそ送れんなよ遅刻魔~!
講義じゃないんだから遅れたらはったおすわよ~!
彼女に手出すんじゃないぞ~!
ノリの良い返しが来るとそれが合図とばかりに集まっていた人々は散り散りになった。
そして数分後、優咲と男性だけが残ったのだった。
to be continued