暗い螺旋階段をひたすら歩いていた。
暗い螺旋階段をひたすら歩いていた。
チクタク
チクタク
時計の秒針の音がやけに耳に響く。
カーン、コーン
遠くで時計の鐘の音が聞こえた。
懐かしい
アークは立ち止まり、素直に懐かしさを感じていた。
あれは、魔法学校の鐘の音。
再び歩き出す。
歩きながら、意識が学生時代に戻っていくのを感じていた。
アークよ、汝は天才だ。教えることなど、何もない
はい、そうですか
授業が簡単すぎて面白くもなかった。
クラスメイトのレベルに合わせてもいられない。
だから、教師に個別授業を頼んだのだが……
一日で、匙を投げられた。
魔法使いは色々と面倒だ。
入学した後は毎年進級試験が行われて、そこを突破しなければ次の過程に進むことが出来ない。
毎年、何人かはそこで脱落。
そんな努力を繰り返して魔法学校を卒業。
それだけでは魔法使いにはなれない。
卒業後には魔法使いに弟子入りをして、五年間は見習いとして修行と経験を積む。
五年の見習い期間は必須。
その後に師匠からの許可を得て最終試験を受け、合格する。
そこから魔法使いとして正式に名乗れるのだ。
魔法学校に入学して卒業するまでの期間は個人差があるが、四年から六年と言われている。
五年の見習い期間は必須、気が遠くなる時を過ごし魔法使いに至る。
卒業後の師匠は同じ魔法学校の卒業生になることが多い。
現役教師からの推薦を受けて、相応しい先輩を紹介されるのだが……
私の師匠となれるだけのレベルの先輩がいない………ということですか
魔法使いになる為に努力に努力を重ねて入学することが出来た。
まさか、その結果……
才能がありすぎて師匠となれる者がいない……なんてことになるとは。
誰もアークを弟子にはしたくないのだ。
自分よりも優れた弟子など取りたくないらしい。
在学中にそんなことを言われても困る
はぁー
ため息を吐きながら、自室当然になっている図書室の奥にある個室に向かう。
そこで自習をはじめる。
教師がいなくとも勉強はできる。
今までもそうして来たのだから。
魔法学校のカリキュラムには面倒なものも含まれていた。
その一つがこれ、
<先輩が後輩に授業をするという必須カリキュラム>
それが設定されるのは、四年生からだ。
成績優秀な先輩の授業を受けたい生徒は数多くいた。だけど、教える側にだって選ぶ権利はある。
どうせならば対等なレベルの者が良い。
そう言ってしまうと、アークの教室には誰の姿もなかった。
これは……後輩のレベルが低いという証拠でしょうかね。ですが、困りました
これは必須カリキュラムで、後輩の評価が成績に反映される。
生徒を集められなかっただけで点数は0になってしまう。
学年トップなのに、これは困る。
ちなみに、アークが後輩だった頃……一応学年トップらしい先輩の授業を適当に受けていた。そして、辛口の評価を叩きつけていた。