碧ちゃん、持ってきたよ~!

桜子ちゃん…!ありがとう

 碧はやきいもを受け取る。

ふわっあつっ!

 碧はしばらくフーフーとやきいもに息を吹きかけながら手の平の上で踊らす。

…ん。やっぱりやきいもおいし。わたし大好きなの

まさかの好物だった!

 俺もベンチに座り、袋からやきいもを取り出す。

 そして碧に気付かれないようそっとベンチ裏に隠れる麗花に渡した。

ほら、やきいも

……

…せっかく買ってきてやったんだから感謝して食べろよ

……!

 麗花はスケッチブックに何かを書き込む。

そうだな、感謝するとしよう――『桜子』に

結局は『桜子』のお小遣いなんだからな

…けっ。まぁその通りなんだけどな

ふふっ

 麗花は静かに冷ましながらやきいもを頬張った。
 
 俺も続いてやきいもをかじった。

あつっ

そりゃそうだよ。焼きたてだもん

 碧がそう言って、二人で笑った。

なんか悪いなぁ。ここまでしてもらって…。この前のゲームセンターのこともあるし、何かちゃんとお礼したいな

そんないいって――……

いてっ

えっ、大丈夫?

う、うん大丈夫~。痛くないよ~

…?そっか

 碧は特に気にせず、やきいもをまた食べ始めた。

 俺は麗花の方を見た。

なんだよ

バカが。せっかくお礼をしたいと言っているんだ。お礼として本のことを吐かせろ

あぁ…なるほど

これで『転生』について一つしれるかもな。しっかり聞き出せよ

コイツはブレないなぁ……

…………

――碧…ちゃん、お礼したいならさ

うん

この間の…本のこと、教えて欲しいな

――……っ。

ね、いいでしょ?

あの本は――知らない

碧――

ダメなのっ。だって、だって――

……だって?

…その本が知りたいってことは、『転生』について知りたいってことでしょう?

そんなこと知ってどうするの?

それは……

わたし実は、前図書室で桜子ちゃんと麗花ちゃんが『転生』について何か話していたのを聞いてしまったことがあるの

――えっ

 俺らはまだ二人で図書室にいたことはない――ということは以前の桜子と麗花が……?

それで、二人が帰ったあと、本を読んで『転生』について調べてみたの。…聞いたことない言葉だったから

――生まれ変わっちゃうってこと、なんだよね

ねぇ、桜子ちゃん…『転生』について知ってどうするの

『転生』しようって考えているのでしょう?

お願い、桜子ちゃん…

わたしは、今の桜子ちゃんと離れたくないの……!

…………。

 もう『本当の桜子』じゃないなんて、言えるわけなかった。

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