放課後、俺は図書室へと来ていた。

 麗花が「今日は各自で転生に関するものや二人について調べよう。僕は屋敷に何かないか探ってみる。せいぜい君も、ない頭を使って少しでも成果をあげてきたまえ」と、相変わらず一言多い言葉を残していったからだ。

ほんといちいち腹の立つ奴……

 そんなことを思いながら、俺はオカルトコーナーの本を眺める。

 ここなら、『転生』に関係した文献が見つかるのではないかと踏んだのだ。

 しかし、大半を占めるのは『未確認生物』や『UFO』、『心霊』など子供向けに書かれた書物ばかりだった。

そりゃ、小学校の図書室だもんなぁ…。普通に市内の図書館に行った方が良かったか……

 だが、今から行っても図書館は閉館している。ここで何かしら手がかりでも見つけたいところだった。

なんも成果なしでいったら、それこそ麗花になんと言われるか…

 馬鹿にされるか、怒られるか…いや、両方の可能性だってある。

何かないか…

さっ、桜子ちゃん

 呼ばれた方を見ると、本を抱えた碧の姿があった。

あ、碧ちゃん。偶然だね

うん、ほんとに…!何か探し物?

うん、ちょっとね~。碧ちゃんはそんなに本持って…それ全部借りるの!?

あはは。違うよ。図書の整理していたの。わたし、図書委員だから

 そう言って、碧は本を決められた場所へ戻していく。量も多く大変そうだった。

良かったら手伝うよ

いいの…?ありがとう

 俺は本を半分受け取り、碧の指示に従って棚に並べていく。

桜子ちゃんのおかげで早く終わりそう…!助かったよ

いいってことよ。いつでも頼ってくれていいからな

うん。ありがと、桜子ちゃん

 最後の一冊になり、後はこれをしまうだけとなった。

これはあそこの一番上のところだから…わたしが戻しちゃうね

届く?

大丈夫だよ。ハシゴがそこにあるから

 俺は不安を覚えながらも、碧を後ろで見守る。ハシゴをしっかり支え、碧は本を登っていく。

大丈夫?碧ちゃん……

と、俺は上を見上げてそう声をかけた――と、同時に視界に飛び込んでくる純黒のパンツ。

 …完全に失念していた――そうだ、相手はスカートを履いていた!

 見上げれば目に入ってきて当然だ!

 俺は咄嗟に――嘘だ、三秒くらい凝視してから目を逸らした。

心配しなくても大丈夫だよ。しまうだけだもん

 そんなことは露知らず、碧は笑いながらそう言った。

黒だったが…あれは絶対スパッツなるものではなかった…!

あの…桜子ちゃん?

えっ、はい、な、なんにも見てないよ!?

…?えっーと、もうしまいおわったから降りたいんだけど……

あぁ、ごめんどくね!

 俺はハシゴから手を離しどいた。碧はゆっくりとハシゴから降りる。

ふぅ。今日の整理はもうおしまい。あとはカウンター…だけど、わたしたち以外誰もいないね

ふ、二人っきりだね

?うん

……。あ、良かったらさっき本探してたみたいだし、お礼ってわけじゃないけど、今度はわたしが桜子ちゃんのお手伝いするよ

わたし図書委員だし、他の人よりは蔵書について詳しいと思うの

ほんと!?そりゃ助かる!

 俺は碧の手を取り、礼を言う。

 これで手がかりとなる本を見つけられれば、麗花にとやかく言われずに済む。

あの…手……

あぁ、悪い悪い

 俺は手を離した。

あっ

ううん、なんでも。…で、探している本ってどんなの?

えっとな、『転生』に関する本を探してて。転生じゃなくても魂とかそういう……

――『転生』?

うん、人が死んでまた生き返るっていう…

そんな――

ん?

――そんな本、知らないわ

 そう言うと、碧は図書室から出て行ってしまった。

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