桜子ちゃん

 給食の時間、俺が麗花と机をくっつけ支度を終え着席したところに、給食をのせたおぼんを持った碧が現れた。

わたしもそこに入っていいかな?

うん。もちろんいいよ!

一緒に食べましょう

 碧は近くの空いている机を移動させ、俺らの間につけた。

 全員の準備が終わったところでいただきますの挨拶をして、一斉に食べ始める。

もぐもぐもぐもぐ…。
やっぱおいしいね!この揚げパン!

う、うん。にしても食べるの早いね、桜子ちゃん…

あー……

……

 向かいの麗花にすごく睨まれた。

 ――そうだ…食べるスピードも気を付けないと…。ついついがっついて食べたくなっちゃうんだよなぁ。

ふふ。なんか桜子ちゃんって最近すごく変わったね

えっ、そ、そうかなぁ…?

 そりゃそうだと心の中でツッコミをいれつつ、俺は苦笑いを浮かべた。

そうだよ。桜子ちゃんって本当、優等生って感じで、勉強もスポーツも完璧で周りからもすごく好かれてて…

誰にも優しくて、いつも笑顔で。

でも、今日の朝の時みたいに……あんなに怒ることもあるんだなって

――わたしは桜子ちゃんが正しいと思う

…それに、あんなに真っ正面からあの子たちと向かい合えるなんて…すごくかっこよかった…!

碧ちゃん…!

本性はただの変態ですけれどね

へ?

麗花!!

…ちゃん。このスープとってもおいしいねぇ~!

ええ。そうですわね

コイツ……!

麗花ちゃんも随分イメージ変わったよね

…え。そうですの?

 麗花は若干驚いている。まさか自分まで言われると思ってなかったんだろう。

麗花ちゃんこないだまでずっと一人で…桜子ちゃん以外の子とは、絶対に話さなかったのに

あー…そ、そうでしたわね…

 自分の本来の立ち位置を再確認させられる俺たち。

ま、まぁ人は常に変化するものだからね!

そ、そうですわね!

う、うん。そうだね…?

――わたしも、変わらないとなぁ…

…ん?

う、ううん!こっちの話…!

 碧は顔を赤くして、焦りを誤魔化すように揚げパンを頬張った。

むっ…むぐぐっ…

碧ちゃんも、バカの真似をすることありませんわよ

さりげなく俺…わたしのことをバカって言わないでよ~

 そんなこんなで、その後も雑談混じりに給食の時間を楽しく過ごしたのだった。

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