おっ。おはよう麗花ー

おはようございます。桜子ちゃん。十分の遅刻ですわよ?朝からわたくしを苛立たせないでくださいます?

 朝の登校、待ち合わせ時間にちょっと遅れただけだというのに、麗花の笑顔の向こうには怒りの表情が見えた。

ちょっと遅れたくらい怒るなって~

十分の遅刻は社会人として情けないと思いますが?

今は女子小学生です~

屁理屈を並べないでくださいまし。変態ロリコン野郎

………。

 コイツ、俺が女子小学生でないと確信してから容赦ないな。

というか、もうそろそろお前も口調に気をつけろ。学校で周りの目がある間はなるべく桜子ちゃんらしくしろよ

わかってる、わかってる

じー……

わ、わかったよ。麗花ちゃん!

 教室に着くと、前に話した女子三人組が待ち構えていた。

ねぇ、桜子ちゃん

 三人組の一人が一歩前に出て、口を開いた。

城ヶ崎に無理に一緒に登校とか、給食食べたりとか、嫌なら嫌でいいんだよ?

――え?

前から登校は城ヶ崎としてたけどさぁ~、それムリヤリでしょ?

 今度は、もう一人の女子が話し出す。

そうそう。最近帰りも一緒だし。昨日公園で遊んでるのも見かけたよ?
城ヶ崎もさ、いくら一人だからって桜子巻き込むのやめてよ。金持ちだからってえらいわけじゃねぇんだけど

 最後の一人も続いて言う。

ね。城ヶ崎なんて無視してさ、また私たちといようよ。城ヶ崎からはわたしたちが守ってあげる

……っ。

 ニタニタと嫌な笑顔で誘いをする三人組。
 
 ――気分が悪い。

…おい桜子。ここは彼女たちについておけ。後々面倒になる前に

 麗花がそう耳打ちするが、俺はそんなの全くお構いなしだった。

断る!!!

は…はぁっ!?

てめぇらなんかとつるむより麗花の方がよっぽどいいわ!

俺は確かに麗花のことよく知らねぇ…でもそんなにお嬢様が嫌か!?金持ちが憎いか!?

そんなの全く関係ねぇだろ!大切なのは中身だ!!

もっとちゃんと中身と向き合ってから文句言え!

ちょっ、桜子どうしたの!?

――どうもしねぇよ。お前らもそういうのやめろ。どんどん醜くなるのは自分らなんだから

なっ……。
なによ!せっかくまた仲間に入れてあげるチャンスやったのに!もう好きにすれば!?

 三人組はそのまま教室を出て行ってしまった。

 …まぁ、朝の会までには戻ってくるだろう。

…おい、桜子。

 麗花が俺の肩に手をかけた。

やべっ、さすがにこんなことしてちゃ怒るか…!?

 しかし麗花は俺の予想に反して、微笑みを浮かべていた。

…よく言ったな。
あの子たちも、今すぐには理解できなくとも、これをきっかけにこれから少しずつ良い方向へと成長していくだろう

麗花…!

ただ、元の『大内桜子』と『城ヶ崎麗花』が僕たちの責任でクラスに居づらくなってしまっては困る。
今ので、今までの二人の人間関係を変えてしまったからな。
少しでも改善して、二人がきちんと学校生活を送れるように整えておかねばならない

おう!

…全く、面倒なことをしてくれたな

 麗花は小さく笑って席についた。

 俺も笑い返し、自分の席に着席した。

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