第五話
百鬼夜行
第五話
百鬼夜行
ああ店長だあ、おかえりなさい。
ただいま香奈子さん。
デッサンははかどりましたか~?
まず聞くべきは来客や発注の電話が無かったかでしょう!?
本当に坊野さんには甘いんですから!
まあまあ、いにお君だってあんなに美味しそうにワンタン食べてたんだから今日はおあいこでしょう?
おかわりまでねだったりして
わわわ、アライヲさんそれは言わない約束でしょう?
坊野さん、今日もお勤めお疲れさまでした~
ワンタン?それともワンちゃんって言った?
あ、エリーゼだ。
お疲れさまでした~
ナイスタイミング!!
はい、お疲れ様でした~
明日もよろしくお願いします~
それじゃあ、いにお君。
今日は私たちも上がりにしましょう。
大きな商談を終えたことですしね。
うーん、僕にはアライヲさんが勝手に200万円の損益を出したようにしか見えませんでしたが…
そうですね、では今日のところは早めにと売上報告書を本部に送って上がらせていただきます。
お父様に怒られても知りませんよ?
本部もクソもねえよ。
今日のチャイルドプレイはもう終わりだ。
グッドナイト、マイチャッキー
え?
窪中いにお
くぼなかいにお
ぼくおにかいな
僕、鬼かいな
〇ァックオフ!
閻魔様も冴えない親父ギャグを考えたもんだ。
もうちっとはマシなダミーをくれよな。
アライヲ様からも言っておいて下さいよ!
どうやら僕、窪中いにお
なんていう人間は
はじめからこの世に存在していなかったみたい。
(道理で業務内容が漠然としてたわけだ)
それはお前が獄卒(※1)出たての青二才で自在に擬態化できないからそうなるんだろ?
人のせいにするな。
※1獄卒…地獄で亡者たちを責めいじめる鬼。あるいは地獄の番人。
それに俺はお前よりいにお君の方が優しくて愛くるしい。
俺はお前が嫌いだ。
口が悪いし、知性もない。
鬼が鬼に知性を求められてもねえ、ククク。
楊様の絵みたいに
僕、窪中いにおという人間もまた
フェイク(贋作)だったってわけ。
もちろん、僕はそんな事は露知らず
いまごろあのチャイナは大金を手にもう雑居ビルの裏カジノにのめり込んでいる頃だろう。
その隙に店に侵入してあのデモニキュリオを説得する。
いつも日が沈む頃には必ず閉店してしまう
ここ璃玖堂は六道、つまり鬼の棲み処
だったってわけなんだ。
なんでそんなにまどろっこしい事するんですか?
あの時、なめた寸胴をそのまま首輪つけて地獄に持って帰ればオールオッケーだったでしょ?
そんときに多少犠牲が出てもそいつは冥途の土産って事でオーライ!
だからお前がこんな風に擬態化できて、スマートに捌けるならそうしてたさ。
そして諺の使い方が間違えてるぞ?
うらやましい!
あといくつデモニキュリオを地獄に送ったら俺もそれぐらい強くなれるんですか?
彼らが言ってるデモニキュリオっていうのは
デーモン(悪魔)+キュリオ(骨董品)
=悪魔の骨董品
って事。
ざっと千年は要するだろうな。
お前は物覚えが悪そうだからな。
二岡アライヲ
におかあらいを
をいらあかおに
オイラ赤鬼
本当に父上にももう少しセンスがないと困る。
へへへ。
俺と言ってること変わらないじゃないですか。
彼らは骨董商というフェイク(仮初)
を駆使してこの世にある
デモニキュリオを
蒐集するのが目的なんだ。
なぜかって?
デモニキュリオを地獄の拷問器具に転生させて
父親である閻魔大王に献上するためさ。
そうだな。
まあ同族嫌悪ってヤツだよ。
さあショーを始めよう。
もう後がない奴らのために。
どうせ目覚めたらいま僕が
君たちに語ったことは
全部忘れてしまうんだ。
だからもう目と口を閉じて
悪魔の中で静かに眠る事にするよ。
心配しないで
これは今に始まった事じゃない。
ただこれから始まる鬼畜を
君たちの瞳に託すことにするよ。
続く