職人は転生されない、
光の剣も、闇の盾も、存在しない、
次の世界は、そんな世界だ
転生は平等に行われる。
だけど、それは魂が在る者に限ること。
私たちには関係のない話だよね。
「光の剣」も「闇の盾」も、毎回存在しているでしょ。あれは転生しているのではなかったの?
転生ではないわよ。だって、ただの武器だもの。再生されるって感じだね。
転生しているのは、私たちを生み出した職人の魂。
職人の魂は転生を繰り返していた。
私たちは勇者を失ったときのボロボロの姿で、彼と出会う。
そして、彼の手で再生されてきた。
今まで、ずっと……
初代は勇者の幼馴染。
その後も近しい存在として転生。
彼に与えられた未来は、いつも勇者の死に絶望して、命を絶つこと。
その勇者の幼馴染とやらは、この世界にはいないの?
ええ、どこにもいないわ
………なぜ?
この世界は平等なのよ。
今まで転生できた者が転生できないなんて……それは、解放されたってこと?
……結論から言えば解放された。少しも幸せな結末ではないけれどね。
我らに心が芽生えたのは前回からだ。長年、勇者の側にいたことが影響したのだろう。
我らに心が芽生えたからだろうか……職人の心が壊れてしまったのも前回のことだった。
勇者が光の剣で自害をすると、我らは職人のもとに戻った。
お帰りなさい。
刃こぼれが酷いな。
盾も傷だらけだ。
悪いが、お前らを再生させるのは次の転生者。
だから、このままだ。
あーあ………オレも死ぬのか。
いつものように、
今までのように
転生したところで、オレはまた勇者の為に剣を造るだけ。
そして、彼はオレの剣で自害する。
そんなのもう耐えられない……光の剣は勇者を護る為に打っているのに……どうして、どうして、どうして、どうして…………こんなの、もう、耐えられない
何をしているか……気になるか?
そうか……あれだけ勇者の側にいたからな、お前さんたちにだって心が宿るよな
これは武器を……人の姿に変える禁呪。
お前さんたちは今までの力を失うが、今度は自分で歩ける。
お前さんたちも自由の身だ!
これで、次の世界には光の剣も闇の盾も存在しない………そこに、オレの居場所は、ないよな……
この禁呪が発動されるのは、次の勇者の時代。もしも、勇者の魂に会ったら、よろしく伝えてくれ。オレは、職人は、いないから……
転生しなくて………良いんだ………もう、耐えられない。勇者の死は、もう……見たくない
職人は転生されない、
光の剣も、闇の盾も、存在しない、
次の世界は、そんな世界だ
今までのお前は……
光の剣を手にしたことで、
魔王討伐を決心していた。
預言者はいつも言っていた、
光の剣を再生させなければ勇者は死んでしまう。だから、必ず光の剣を再生させるのです
その光の剣で魔王を滅ぼすのが勇者の使命だ
その先には絶望しかないことは、
知っていたけどな……
オレたちは従うしかなかったよな。
勇者………
次のお前に武器はない、
戦うための武器がないお前は、
戦う必要ないんだ。
オレはいないけど、
誰かと出会って、
今度こそ幸せになって………
遠い空の彼方から
冷やかしてやるよ、親友!
因みに私の性別が女の子だったのは……戦わない為。
もしも男の子の姿だったら、勇者の右腕の剣士になってしまうからだよ。
我が性別男の魔族の姿なのは、一緒に行動するには魔術師と使い魔の関係が適当だと判断したからだ
生まれ変わるのとは違う状況。
今の私は人間の姿だけど、人間から生まれたわけじゃない。
気が付くとこの時代にいたのよね。記憶があるとはいえ、人間の生き方は手探り状態だった。大変だったね。
大変だったな……
そんなわけで、この世界に職人はいない。
職人がいなければ「光の剣」は生み出されない……「光の剣」がなければ勇者は魔王と戦えない
勇者は運命から解放される………………そう思っていたんだ
だけど、彼や私たちの考えは甘かったみたい。
……
!!
魔王様と勇者は出会ってしまった。そして、当然のように剣を交える。これは、彼らが背負う運命。
こんなはずじゃ、なかったのに……
さて、「第三の瞳」の話も聞かせてくれ
to be continued