ダイゴ

………。

ダイゴ

………。

ダイゴ

ちょっと!いい加減起きて下さいよマスター!

マスター

……!?

男の姿はない。

びっしょりと汗ばんだシャツ。

灰皿の上で空気に吸われてしまった煙草。

目の前で呆れた顔のダイゴ。

夢?

そんな馬鹿な。
あんなリアルな夢があるのか?

焦点の合わない目で時計を凝視する。

マスター

二時三十分…。

ダイゴ

まったくいきなり寝ないで下さいよ。
僕帰れないでしょうが。
大体毎日毎日飲みすぎなんです。
あなたもう四十歳ですよ?
しっかりしてほしいですね。

マスター

すまん。

ダイゴ

いや、いいんですけどね。
ダメな人なのは認識していますから。

マスター

寝起き早々、キツイお言葉ありがとさん。

ダイゴ

しかしまあ…酷い魘されようでしたよ。
借金取りに追われる夢でも見ましたか?

マスター

もっとタチが悪いやつさね。
妙な男に殺されかけた…こう、首をぎゅっと…

そこまで言いかけた瞬間、
ダイゴの顔が見る見る青くなっていった。

ダイゴ

…マスター、首に。
跡が。

マスター

……。

携帯のカメラを鏡のようにして自分の首を写してみる。

そこにはくっきりと手の跡があった。

全身の血の気が引いていく。

マスター

やっぱり…ただの夢じゃないようだ。
俺が寝ている隙にダメなマスターが憎くてダイゴが首を絞めたわけじゃないだろうし。

ダイゴ

しれっと人聞きの悪い事言わないで下さい!
茶化して怖いの隠す気持ちは分かりますけども…。

静かなジャズが流れる店内で、
俺達は押し黙った。

こんな状況、どうしろと?

また脂汗が額に滲み出る。

しばしの沈黙を破ったのはダイゴだった。

ダイゴ

今日はもう、帰りましょう。うん。
気のせいですよ、気のせい…。

マスター

なァ…ダイゴの家、泊まっていい?

ダイゴ

お断りします。

マスター

だよね…。

何とも言えない気分で機械的に帰り支度をし、
俺達は店を後にした。

勿論、俺がビクビクしながら家に帰ったのは
言うまでもない。

To be continued…

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