納品は滞りなく。先様も昨日の夕刻には出たと仰っていますし

え?


昨日?

一日以上経っているのに
帰ってきていない?

それって……











何故、帰って来ない?













































新たな血を求めて彷徨う彼の姿が
脳裏に浮かんだ。

























ちょっと待て。昨日って、

廊下を歩いて行く
紫季の背を追いかける。






よくあることではないはずだ。

少なくとも
晴紘が転がり込んだ数年前からずっと、
灯里が連絡も無く
帰って来ないことなどなかった。








……俺に見られたから、帰って来ないのか?

それとも










『死んでくれる?』








あれが灯里じゃないとしたら、



自動人形は
遠目から見れば女と変わりない。

連れている灯里も
腕っぷしが強いようには見えない。










もし犯人が別にいたのなら。

女と間違えられて
襲われたのだとしたら、







紫季!


だから、
帰って来ないのだとしたら。






紫季の腕を掴んで立ち止らせる。

主人が行方不明だと言うのに
相変わらずの無表情。

心を乱している様子も窺えない。




……っ





おかしい。




簡単な機械類の修理くらいなら
こなしてしまう彼女だが

それでも灯里の代役は務まらない。




このまま彼が帰って来なければ
今までの生活水準を保つどころか
生半可では無い苦労が
待っていることだろう。








この国は
保護者のいない未成年に優しくない。


晴紘が引き取ったとしても
公務員の安月給では
今と同じ生活水準は維持できない。


それを理解していないのか。











いや、それよりも。



何より彼女は
灯里に心酔していたはず。


不在を案じることはないのか?

 

























もしや

紫季も灯里の奇行を知っているから
不在に動じないのだろうか。


























留守にする理由を





























知っていて
黙認しているのだろうか。










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