灯里……!?
その顔はまぎれもなく級友のもの。
木下女史の命と天秤にかけたもの。
彼を取り戻すために自分は、
こうして戻って来たと言うのに。
その彼が、何故。
彼は嘲笑うように口元を歪めた。
今までに見たこともない表情に
手も
足も
動かすことができない。
大庭くん!
あの木下女史が
彼を前にして動けなかったように。
何故。
何故、灯里が。
この一連の犯行は
すべて彼がやったものなのか?
何故。
何のために。
何故、
やっとの思いでふり絞った声に、
彼は冷淡な目を向ける。
何故って。この足が欲しかったからだよ
……言ったろ? あの手はピアノを奏でるための手。この足は、
ふふ、と笑う。
愛でるように
その蝋のような二本を撫でる。
違う!
切り取った手はピアノを奏でない。
切り取った足も速くは走れない。
切り離されたそれは
もう、ただの骨と肉の塊。
人形のパーツとは違う。
晴紘
!
自分の名を呼ぶ彼は
やはり灯里なのか?
疑いようもなく――
死んでくれる?