いくらなんでもそれは不自然だ
出て行きたい。
犯行を止めたい。
しかしそれではなにも変わらない。
だが
これで……いい、のか……?
!
塀の向こうで悲鳴が聞こえた。
聞き覚えのある声。
その声が罪悪感となって胸をえぐる。
しばらくして
と、何かを引きずるような音が
聞こえた。
晴紘は近くの路地に身を潜め
……
そこから窺う。
黒いマントとシルクハットに
身を包んだ人影が現れた。
脇に
白い棒のようなものを抱えている。
二本。
……!
それが人の足だと気づいた途端、
嘔吐が襲った。
殺されている。
あの塀の向こうで
木下女史が殺されている。
足を
膝から下を奪われて。
涙を流し、強張った表情を浮かべて。
俺が……見捨てた……か、ら……
俺は今
とんでもない過ちを
してしまったんじゃないのか――?
……っ
思わず漏れた声に
去りかけていた黒マントが振りかえる。
深くシルクハットを被ってはいるが
仮面で顔を隠すような真似はしていない。
そう思っていると、
目が合った。