推理小説だってただ漠然と読んでいるだけではありません。一度見たことがあるタイプなら解けないこともないはず。
えーっと、これは
ギブアップは早目をオススメするよ
大丈夫です。これはいわゆる踊る人形と同じですよね。わかってます
推理小説だってただ漠然と読んでいるだけではありません。一度見たことがあるタイプなら解けないこともないはず。
このタイプの暗号は一文字に対して何か別の記号、今回はひらがなが当てられているだけなのです。つまりわかるところから順番に考えていけば自然とわかってくるはずです。
まずこれは英語、ですよね?
そうだよ。確かに僕の父は世界中を回るから数ヶ国語は話せるけど、今回は英語だ
やっぱり
不自然な区切りがあるということは、このひとかたまりが単語一つ。そうすると早くも一文字がわかりそうです。
り、がIですね
よくわかったね
二文字の単語でこの短い文に三度も出てくるならit、is、inといった単語の頭文字であるIの可能性が高いです。そうすると文頭にきているIねがあるので、ね=Tになりそうです。
でもここからがわかりません。
えっとIから始まるこんな長い単語は
ちょっと思いつかないですね。もしかすると私の知らない言葉なのかも。
高校生ならわかるレベルの文章だよ
そうなんですか?
私の気持ちを読み取ったように小岩くんが言います。もしかして私って考えていることが顔に出ているんでしょうか?
あ、そうだ。ヒントがあったんでした
6/17、6/20、6/24。
これは間違いなく、シャーロック・ベイカーの公演の日付。
つまり東京、ロンドン、パリのことですね。
これを一文字ずつ当てていくと……
TOKYO=ねよるひよ
LONDON=をよかによか
PARIS=たいそりつ
うん、文字の数も対応もあっているみたいです。
これを暗号文に当てはめてみると
『DほAR わY SON
IはほはRほAわ IS IN へRIDとほ
IT むILL ろほ わほLTほろ
へROわ YOなR へATちほR』
うん、なんとなくわかってきました。
手紙の最初は宛名で、最後は差出人だから
これを日本語にすると。
アイスが冷蔵庫に入っています。溶けちゃうよ、ですね!
正解だ
小岩くんはもうカップアイスを一つ食べきってしまったみたいで、満足そうな顔をしています。あれ、何かおかしなことがありませんでしたっけ?
冷蔵庫!
そうです。アイスクリームは冷凍して固めておくもの。そんなものを冷蔵庫に入れたら少しずつ溶けてしまいます。暗号にもそう書いてありました。私は慌てて小岩くんの了解もとらずに冷蔵庫を開けました。
そこにはまだカップのアイスが残っています。
好きなのを一つどうぞ
は、はい
ストロベリーのカップを手にとりましたが、もうその触り心地に嫌な予感しかしません。
だから早くギブアップした方がいいと言ったのに
いいんです! アイスは溶けかけているところが一番おいしいんですよ!
暗号とアイスクリームは解けた方がいい、って言うんです。今、私がそう決めました。