魔法であった。





 いや、この光はどう発せられたか、などという疑問を持つことなどは現状有り得ない。
 それはこの世界にとってその光こそが普遍的であるものだからだ。

 そうではない。
 今まさに己が魔法のようだと思ったそれは「文字」、いや「文章を書き出す」ことに向けての感想であった。


 この目の前に光を発している、ぼんやりとした印象の儚げな少年はペンを持たない。
 が、青い光を纏った細い人差し指を紙に翳すだけで欲しかった「知識」を得ることが出来るのだ。

 目を瞑ったまま、その魔法を行使していた少年の手が止まる。そのまま不思議な形をしている瞳孔をこちらに見せて、不機嫌そうにため息をついた。

finish reading――

おお……!

――output……完了だ



 先程まで真っ白だった画面をびっしりと文章で埋め尽くした紙を、これまたぶ愛想に投げつけるかの如く(いや、投げつけたのだ、奴は)渡す少年。

 なるほど確かに求めていた知識に違いない。
 果たして、彼はどこからこの知識を「得た」のか。

 金をよこせと催促する素振りを見せる少年を無視して、自分なりの、精一杯今出来る感謝の言葉を放った。

良い。余の下僕となることを許可する!

序章 悪意の擬人化 Ⅰ

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