ごめんなさい。待ちました?
今日もいつもと同じ靴なのですね。
僕、いま靴を手直しする勉強もしてて、
今度来て下さったら修繕させて下さい。
正直に言います。
僕はいつも見惚れていました。
あなたは僕の生きがいです。
だからもし、あの方の言った事が本当で、今が幻でないのなら僕はずっとあなたと・・・
ごめんなさい、だいぶ待ったみたいね
あ、うん?ごめん。
何か夢を見てたよ。
ちょっと変わった夢。
どんな夢?
中世ヨーロッパの王様の靴を磨いた報酬にデートを手配してもらう夢。
本当に変なの。
だいぶ疲れてるんじゃない?
大丈夫?
まあ、余裕とはいえないかもね。
君だって、店始めたばっかりでいろいろ大変だろ?
私はどっちかというと暇疲れかしら?
早くあなたのようにお店を軌道に乗せたいわ。
まあ、悪い事ばかりじゃないだろう?
今日は君にプレゼントがあるんだ
箱の中身はたくさんの造花に包まれた先の尖った革靴だった。
ちょっと先をとがらせてみたんだ。中世のブリティッシュスタイルでプーレーヌっていうらしい。
素敵ね。三日月みたい。
早速ウチのお店に陳列してもいい?
ええ!君へのプレゼントだから、そりゃあ君がどう使おうと勝手だけれど…
アハハ!
バカね、冗談に決まってるじゃない?履いてみてもいい?
ははは、安心した!
もちろん!
似合う?
うん、綺麗だよ。
君はとっても綺麗だ
ちょっと、泣くほどの事じゃ…
本当に綺麗だよ。
俺はね、君に靴を作れる事が本当に幸せだなあと思っただけ。
ただそれだけなんだけどね。
何でだろうね?
ねえ、このまま散歩しない?
午前に雨が降ったから、隅田川に虹が架かっているの。
早くこの靴で歩いてみたいわ。
うん、ありがとう。
・・・これちょっと歩きにくいかも
ええ!?ごめん、
じゃあ工房寄って中敷き入れる?
あはは、冗談よ。
とっても素敵な履き心地よ。
ありがとう。
本当だ。
とっても綺麗な虹だね。
そうね。
ずっと続くといいね。
そうだね。
ずっと幸せでいられたらいいなあ。
どぅも。まいど~
てかマスター、あの人何泣きっすか?
コーヒーを飲むや急に居眠りして、彼女に起こされてプレゼント渡して急に泣き出すヒステリックぶりぃ。
ちょっと僕に無いメンタルだなあ。
割と無理っす、アイツ。
理由の無い涙はすべて前世の因果から来ているのだよ。まして愛しい彼女の前でそれが起きてしまうのはなおさらだがね。
さーせん、要は何?
一言でまとめると?
この人は運命の女性なのだなと確信した、という事さ。
うーん、とりま納得。
てか、マスター。
あいつら勘定払わないで出て行っちゃいましたよ?
ワォ!この感動的な流れで無銭飲食!?
やれるソレ?
さーせん。それ僕の決めセリフっす。
久々の登場過ぎて忘れちゃったかな。
どぅもどぅも。
way of 春風
the End