治療の名目で本部まで戻ってきたジェードは非常に落ち込んでいた。
まさに、敗走というにふさわしい出来事だった。
ジェード……
僕のせいだ……僕のせいで……
治療の名目で本部まで戻ってきたジェードは非常に落ち込んでいた。
まさに、敗走というにふさわしい出来事だった。
俺のせいで……
くそ……
ジェードのせいだけじゃないよ
この問答を何度繰り返しただろうか。
ジェードはうつむけた顔をなかなか上げない。
お前たち……戻っていたのか……
教官……
話は聞いている。
不運な出来事だったとあきらめるしかない
でも……
ジェードは相当なショックを受けているのだろう。誰の励ましも耳には届いていないようだ。
ジェード・フェリシオ、治療の時間だ。こい
治療、というよりはカウンセリングになるのだろう。ジェードは衛生兵に連れられて部屋を出た。
それにしても……ブラッドか……
まさかやつがまた来るとは思わなかったな
アリアはぽつりとつぶやく。
そんなにすごい人なんですか?
あぁ
奴さえ倒してしまえばこちら側の勝利だろうといわれるほどの人間だ。
そして、私の宿敵でもある。
アリアは一気に渋い顔になる
教官として前に立つときにも最も冷静な教官の一人だと言われているアリアだが、ここまで表情を出すのも珍しい。
彼とは知り合いってことなんですか?
知り合い……とは違うかな
少なくとも向こうは私のことは知らないだろう。
どういうことでしょうか?
そうだな……
あまり脅しをかけるのも悪いと思って言わなかったが、状況が変わったしな……
サラ・エリア。私が君たちに送ったアドバイスのことを覚えているか?
サラは首をかしげる。
覚えていないというよりは、ありすぎてどれのことを指しているのかわからないという方が強い
お前たちが戦うのは、国のためじゃない。
自分たちのためだ
覚えているか?
は、はい
ここを発つときにおっしゃってくれた言葉ですよね
そうだ。
その言葉をお前たちに言った理由がある。
そういってアリアはペンダントを取り出した。
そこには一人のアリアと男性の写真があった。
この写真の方は……?
ルイ・ヴェロニカ
私の元上官で、元恋人だ。
教官の元恋人……
ルイはとても優秀な兵士だった。
ブラッドに殺されるまではな
アリアは写真に語り掛けるようにペンダントを見つめる。
サラは息をのんでその言葉を聞いていた。