ハル達四人は、レイマールとディープスの国境を越えた街道にいた。ベインスニクを出立してもう五日は経とうとしている。
ハル達四人は、レイマールとディープスの国境を越えた街道にいた。ベインスニクを出立してもう五日は経とうとしている。
今日は良い天気だね。
ほんと気持ち良い。
とても足が軽く感じるわ。
昨日は大雨で大変だったもんね。
昨日、あんまり
歩けなかったもんな。
今日くらいには着けると
思うんだけどなぁ~。
リュウはディープスにも
言った事あるんすか?
いや俺も初めてなんだけど、
人の流れが増えてるから
おそらく半日くらいかなって。
リュウが言ったとおり、街道には人の数が増えてきている。徐々に増えているので気付きにくかったが、確かに馬車や旅人の数がじんわりと増えていた。
確かに。
ディープスは国を開けているし、
流通は盛んと聞いているから
説得力があるわね。
なんだかワクワクしてきたわ。
晴天に負けないメナの笑みは無邪気だ。そしてリュウの言ったように、歩けば歩くほど人の流れは増えていった。
ん?
なにか人だかりが出来てるっすよ。
ハルの言った通り、随分と遠方に人だかりがあった。前進していくほど、その光景がはっきり見えてくる。どうやら馬車が街道から車輪を外し、立ち往生しているようだ。
うわぁ~、大変そう。
大人三人がかりでも
動かないのね。
私達も手を貸そうか。
いや、厳しいわね。
手を貸すにもあの調子なら、
三人が手を掛けるのが限界だわ。
そうみたいだな。
ちょっと大掛かりな道具か、
余程の力で持ち上げない限り
持ち上がらないぞ。
手を貸そうとした四人は、馬車の持ち主である商人と話す。その商人も、リュウが言ったような結論を出していた。
手詰まり感が場を覆いつくしていた時、傾いていた馬車に手を掛ける色黒の大男がいた。その男は、大した力を込める感じでもなく馬車を軽々と持ち上げた。そして街道に馬車を戻してみせた。
おっ、良い香りがするな。
にいさんは商人か?
ちょいと小腹が減ったんで
何か食いもん売ってくれねぇか?
色黒の大男は、何もなかったふうに商人に話しかける。商人も手を貸してくれた礼を込めて、十分な量の食料を渡した。
こんなに貰ってもいいのか?
ほっほぅ~美味そうだな。
じゃ、さっそく。
極上であろう分厚いハムを、大口に放り込む。実に美味そうに食す姿を、商人も惚れ惚れと眺めていた。
素晴らしい。
それほど美味しく食して
頂ければ幸いです。
それに馬車を悠々担ぐ膂力。
恐れ入りました。
あれぐらいの事で
逆に気を使わせちまったな。
御馳走だったぜ。
お気になさらずに。
ところでこれも何かの縁。
いきなりで不躾ですが、
貴殿のその力を私めに
お貸し頂けないでしょうか?
護衛の話か?
これはこれは察しがいい。
左様でございます。
折角の誘いだが、
俺はディープスで
冒険者になる予定なんだ。
色黒の大男は間を置かずに即答した。商人は目を細めたまま仕方がありませんね、と言葉を返した。
おおっ♪
お姫様も冒険者を
目指してるんっすね。
なるほど。
この前レイマール城付近で
叫んでた相手か。
ハル、わけわからない事
言ってると、聞こえちゃうわよ。
この調子なら最初から
分かってたみたいね、まったく。
しっかし、すっげぇ力っすね。
もちろん面識はないが、ハルは話し掛けていた。人見知りいう言葉は彼の辞書にはない。
おおよ。
力だけは自信があるからな。
自分達も冒険者目指してるんで、
負けてられねぇっす。
おお、そうなのか。
なら一緒に行くか。
俺はダナン。
ダナン=クローバーだ。
一瞬で仲良くなる二人。当然そうなるかのように話始め、ディープスの方へ足を進めた。