ハル達四人は、レイマールとディープスの国境を越えた街道にいた。ベインスニクを出立してもう五日は経とうとしている。

メナ

今日は良い天気だね。

ユフィ

ほんと気持ち良い。
とても足が軽く感じるわ。

メナ

昨日は大雨で大変だったもんね。

リュウ

昨日、あんまり
歩けなかったもんな。
今日くらいには着けると
思うんだけどなぁ~。

ハル

リュウはディープスにも
言った事あるんすか?

リュウ

いや俺も初めてなんだけど、
人の流れが増えてるから
おそらく半日くらいかなって。

 リュウが言ったとおり、街道には人の数が増えてきている。徐々に増えているので気付きにくかったが、確かに馬車や旅人の数がじんわりと増えていた。

ユフィ

確かに。
ディープスは国を開けているし、
流通は盛んと聞いているから
説得力があるわね。

メナ

なんだかワクワクしてきたわ。

 晴天に負けないメナの笑みは無邪気だ。そしてリュウの言ったように、歩けば歩くほど人の流れは増えていった。

ハル

ん?
なにか人だかりが出来てるっすよ。

 ハルの言った通り、随分と遠方に人だかりがあった。前進していくほど、その光景がはっきり見えてくる。どうやら馬車が街道から車輪を外し、立ち往生しているようだ。

メナ

うわぁ~、大変そう。
大人三人がかりでも
動かないのね。
私達も手を貸そうか。

ユフィ

いや、厳しいわね。
手を貸すにもあの調子なら、
三人が手を掛けるのが限界だわ。

リュウ

そうみたいだな。
ちょっと大掛かりな道具か、
余程の力で持ち上げない限り
持ち上がらないぞ。

 手を貸そうとした四人は、馬車の持ち主である商人と話す。その商人も、リュウが言ったような結論を出していた。

 手詰まり感が場を覆いつくしていた時、傾いていた馬車に手を掛ける色黒の大男がいた。その男は、大した力を込める感じでもなく馬車を軽々と持ち上げた。そして街道に馬車を戻してみせた。

色黒の大男

おっ、良い香りがするな。
にいさんは商人か?
ちょいと小腹が減ったんで
何か食いもん売ってくれねぇか?

 色黒の大男は、何もなかったふうに商人に話しかける。商人も手を貸してくれた礼を込めて、十分な量の食料を渡した。

色黒の大男

こんなに貰ってもいいのか?
ほっほぅ~美味そうだな。
じゃ、さっそく。

 極上であろう分厚いハムを、大口に放り込む。実に美味そうに食す姿を、商人も惚れ惚れと眺めていた。

商人

素晴らしい。
それほど美味しく食して
頂ければ幸いです。
それに馬車を悠々担ぐ膂力。
恐れ入りました。

色黒の大男

あれぐらいの事で
逆に気を使わせちまったな。
御馳走だったぜ。

商人

お気になさらずに。
ところでこれも何かの縁。
いきなりで不躾ですが、
貴殿のその力を私めに
お貸し頂けないでしょうか?

色黒の大男

護衛の話か?

商人

これはこれは察しがいい。
左様でございます。

色黒の大男

折角の誘いだが、
俺はディープスで
冒険者になる予定なんだ。

 色黒の大男は間を置かずに即答した。商人は目を細めたまま仕方がありませんね、と言葉を返した。

ハル

おおっ♪
お姫様も冒険者を
目指してるんっすね。

リュウ

なるほど。
この前レイマール城付近で
叫んでた相手か。

メナ

ハル、わけわからない事
言ってると、聞こえちゃうわよ。

ユフィ

この調子なら最初から
分かってたみたいね、まったく。

ハル

しっかし、すっげぇ力っすね。

 もちろん面識はないが、ハルは話し掛けていた。人見知りいう言葉は彼の辞書にはない。

色黒の大男

おおよ。
力だけは自信があるからな。

ハル

自分達も冒険者目指してるんで、
負けてられねぇっす。

色黒の大男

おお、そうなのか。
なら一緒に行くか。
俺はダナン。
ダナン=クローバーだ。

 一瞬で仲良くなる二人。当然そうなるかのように話始め、ディープスの方へ足を進めた。

 ~伏章~     17、ダナン=クローバー

facebook twitter
pagetop