……嘘、だろ……?


この世界は
あの「十一月六日」から
続く世界ではないのか?

元の世界が変わってしまったのか?






俺が木下女史を助けたせいで?

それで
未来が変わってしまったのか?





どうすればいい



ここが元々の世界なら。

俺のせいで
変わってしまったのだとしたら。






  木下女史を取るか   

   灯里を取るか。    


とんでもない二択だ。

どちらかを生かせば
もう片方の存在は消える。


でもそれなら

……木下さんがいない世界が本当の世界、なんだ……から






木下女史を見捨てれば
良かったのか?

それで元の世界に戻るなら

……







馬鹿だ。
何がって、この俺が。




木下女史が助かるのなら、と
忠告を無視したくせに

今、こんなに簡単に
彼女を切り捨てようとしている。
























玄関をくぐると
 目の前に広がるのは深い闇。

廊下も、その先も、
なにも見えない。




紫季


呼びかけても

灯里


返っては来ない。

いるわけない……

住み慣れた家のはずなのに
まるで違うもののようだ。


この廊下は
家に化けた巨大ななにかが
口を開けているのではないか
とすら思う。



自分が知っている紫季や灯里は
既に吞み込まれて
しまっているのではないか、と。















そんな真っ暗な世界で















晴紘はそれを聞いた。





 歌声を。

























歌詞も曲も知らない。

だがどこか懐かしいその歌は
紫季が消えた廊下の先から
聞こえてくる。













ただその歌に引き寄せられるように
晴紘は廊下を進んだ。







【参ノ壱】平行世界・伍

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