食事はみんなで

三人で囲炉裏部屋に戻ってきました。

与兵は火の当たる暖かい場所に鶴太郎を座らせると、しかめ面で、

与兵

ここでおとなしく待ってろ。

と言い、台所へ行きました。

吾助

ふっ……。

それを見て鼻で笑い、吾助は鶴太郎の斜め横に座ります。
小さい家の、小さい囲炉裏なので、二人の距離は近いです。

鶴太郎

う~ん。
怒っちゃったか。

鶴太郎は、小さめの声で吾助に言いました。

吾助

いつもカリカリしてるからな、
あいつ。

鶴太郎

吾助が怒らせたんじゃないの?

吾助

お前のひと言がまずかったんじゃね?

鶴太郎

ボクはベストじゃないけどベターな提案をしただけだし。

吾助

それがダメなんだ。
時に真実は人を傷つける。

鶴太郎

ホントのことなんだから、
いちいち傷つかなくていいのに。

吾助

そういう問題でもないんだよ。

そこへ与兵が空のお椀を持ってやってきました。

与兵

聞こえてるし。

さっき約束をしたので、吾助にトン汁を出しました。

吾助

狭い家なんだから、
聞こえるだろ?

当たり前のように、吾助はトン汁とお箸を持って言いました。

与兵

狭いは余計だ。

鶴太郎

与兵、ボクもお代わり……。

与兵

あ゛?

与兵

まだ食うのか?

鶴太郎

んっ

瞳を潤ませ、哀しそうな顔で鶴太郎はうなずきました。

与兵

…………。

与兵

……どうしたんだ?

しぶしぶ鶴太郎のところへ行きます。

鶴太郎

えぐっ


与兵が隣に座ると、鶴太郎は寝転がって丸くなり、与兵の膝に頭を乗せ、腰に抱きついてきました。

与兵

なんだよ。食事中に寝転がるな。行儀が悪いだろ。


そう言いながらも、鶴太郎の頭を撫でます。

鶴太郎

ふぎゅ、ひっく……


腰に巻き付く腕に、キュッと力が入ってきます。

与兵

う……、けっこう苦しい……。

鶴太郎

ひとりでご飯、
寂しかったよ……。

与兵

…………。


苦しいのを忘れてしまいました。

鶴太郎

与兵がいれば、
もっとおいしくなるのに……。

与兵

…………。

与兵

ほったらかし
過ぎたかもしれない……。

そう思い、ため息をつきました。

与兵

そうだな、ごめんな。


与兵は優しく言いました。

与兵

お代わりやるから起きろ。
そのカッコじゃ食えないだろ?

鶴太郎

…………。

鶴太郎は、そっと起き上がりました。

与兵

…………。

与兵は優しく笑いかけ、転がっていた鶴太郎の空のお椀にトン汁をよそってくれています。

鶴太郎

…………。

鶴太郎は、じーっと吾助を見ました。
吾助は二人の様子を見ていました。

その吾助に向かって、

鶴太郎

…………ふっ

と、勝ち誇ったような顔をしました。

吾助

…………。


ちょっとイラっとしました。

与兵

ほら、まだたくさんあるから、いっぱい食え


与兵は鶴太郎にお椀を渡します。

鶴太郎

うん!

ニコニコと言いました。
吾助は不満そうに見ています。

吾助

いつまでもその場所が自分のもんだと思ってんじゃねえぞ。

そう言ったわけではありませんが、鶴太郎には吾助がそう思っているように見えました。

鶴太郎

与兵はボクのものなの。
吾助の出番なんて、ないんだからね。


吾助をにらみつけ、目でそう言いました。

吾助

それはどうかな?
出方しだいで、どうにでもなる。

吾助も目だけで、そう言います。

鶴太郎

どうにでもならないから。
与兵はボクにメロメロなんだからね。

吾助

ホントにそうか?

鶴太郎

むっ……。

吾助

こいつはすぐに流されるからな。
条件反射で優しくしてるだけだぞ。

鶴太郎

くっ!

鶴太郎は悔しそうに吾助を見ます。
思い当たるフシがけっこうあります。

与兵

なんで、食わないんだ?

と、与兵は言いました。
そして、にらみ合っている二人を見て、

与兵

みんなで食べると美味いぞ

与兵は呑気にそういいました。

吾助

…………。

鶴太郎

…………。

吾助

この唐変木が……。

鶴太郎

うん……。


二人はそう思って、トン汁を食べます。

吾助

…………。

鶴太郎

…………。

やっぱり与兵のごはんは
美味しいらしいです

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