4時間目の体育の時間。
 
牧が休み時間に教えてくれた。
 
今日はバレーのテストだって。
 
死亡フラグがビンビンだね。

 



机とロッカーと靴箱は毎日のように荒らされていて……悪意は日増しに増えていった。

どれだけあの人たちに悪意があるのかわかっているつもりだ。

 


そして、その悪意を一心に受けるのが体育の時間がやってきたことに多少なりとも恐怖は覚えている。

 


通常の授業と違って体育の時間はみんながある程度自由に動ける。
 
そのせいもあって、こう……暴力的なものが横行する。
 
女子なのに。
 
女の子なのに、突き飛ばしてきたりするからめっちゃ怖い。

 



しかも今日は、球技。
 
そして、バレーボールって意外とぶつけられるといたい。

 

できれば見学したいけど、今日はテストだから見学すると成績に響くんだよねぇ。

困った困った。

とか、考えていると、荷物を持った牧が近づいてきた。

そろそろ行くー?

絢香

いくいく

途中まで送ってくれるって

そういってすでに着替え終わった千裕たちを顎で指す牧。

……なんだろう、牧がどんどんたくましくなっていく。

絢香

体育出たくなーい

全部の荷物を大きめの鞄に移しながらいえば、牧は苦笑する。

出ないと調子に乗せるようなものだからね、頑張って

絢香

うん

絢香たち、女子更衣室で着替えるの?

絢香

他にどこで着替えろと?

トイレとか

絢香

なんでよ!

邪魔されたりしない?

絢香

いや、するけど、トイレで着替えるとか、匂い付きそうでやだ

絢香ってそういうとこあるよね

絢香

どういうとこ?

こんな状況なのに、そんな些細なこと気にするとこ

うーん、女子として譲れない一線みたいなものだと思うんだけど、実際、移動ギリギリで更衣室はいればみんな授業でさっさと出ていっちゃうし。

 

それだけなら、急いで着替えればいいし、みたいなこと考えちゃうんだけど、違うのかな?

まぁ、今の絢香ちゃんならトイレで着替えたら速攻拡散されそうだけどね

ああ、確かに、それはあるか

大きくなった荷物を持ちあげると、横から3本手が出てきた。

絢香

だ、誰に渡すのが正解なの?

俺!俺俺!

 匠がすっごい主張するから荷物を渡すとさっさと教室から出ていく。

絢香

……何あれ?

拓也

絢香の役に立ってないって悲しんでたよ

絢香

一緒にいてくれるだけで十分なんだけど

千裕

あと、悠美に負けて悔しかったらしい

絢香

ああ、悔しかったのね

……え?
悠美ちゃんに対抗してるの?

拓也

どこがって感じだよね

絢香

……

誰も匠のことをフォローできずにいると、匠が教室の入り口でそわそわしていた。




ついてきていると思って居た私たちが付いてきてなくて、たぶん戻ってきたのだろう。

 



なんだか、和んだ。

 


体育の前で、絶対嫌なことがある前なのに、匠をみていると、なんだか和んだんだ。

30時間目:日常は穴だらけ(1)

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