僕は、そんなに自己評価が低いでしょうか
ん?気になるかな?
はい。僕には優れた部分が無いと思うので
そう思っているのは、君だけだよ
そうでしょうか
君にとっては当たり前のことだし、君の周りにはあまりにも優れている人が多すぎる
確かに、回りにすごい人は多いです
例えば、君は絵が描けるね?
描けますけど、高校の時のクラスメイトに比べたら描けないも同然です
そのクラスメイトは、どんな人かな?
藝大を主席で卒業しました
例えば、君は洋裁が出来るね?
出来ますけど、お母さんに比べたら出来てないも同然です
君のお母さんは、どんな人かな?
オーダーメイドのお店で、お針子をしていました
ここまで話して、おかしいと思わなかったかい?
何がですか?
君は比較対象がおかしい
そうでしょうか
君が自分と比較して居るクラスメイトも、お母さんも、その道では上位群に入るレベルの持ち主だ。
そんな相手と、凡才を比較するのがおかしい
凡才と言う事は、やっぱりこれと言った才能がないわけだと思うんですけれど
才能なんて物が有るのは、極一握りの人間だけだよ。
殆どの人間が、得手不得手はあれども才能はない
…………
有るのは努力だ
僕は努力が嫌いです
そうだね。自分で努力と自覚する努力は、嫌いだろう
だから、僕はなにも頑張ってません
君はそう思ってるだろう。
それに、君は努力しなくてもある程度なんでも出来る。
勉強も、絵も、歌も、細工物も、昔は苦手だと思って居たかも知れないけれど、運動も出来る
そんな事無いです
もう一度言おう。君の周りにはレベルの高い人が集まりすぎている。
だから自分が底辺だと思い込んでしまうんだ
そうでしょうか
君は凡才だ。しかし劣等生では無い
昔から色々な人に馬鹿にされていました。
だから僕は人より劣っています
ならば聞くけれど、君を馬鹿にした奴らは、君より優れていたかい?
優れているから、笑うのだと思います
世の中にはね、自分よりも優れた人を集団で引きずり落とすことでしか自尊心を満たせないやつが居るんだよ
それは、知っています
君はやつらよりも、きっと優れているのだと思う。
少なくとも、他人を引きずり下ろそうとしない点については、誇るべきだ
でも、僕も昔は憎いやつらを殺すことしか考えられませんでした
でも、ひとつも実行に移さなかっただろう?
はい
その点において、君は優れている
……怖かっただけです
なるほど、そう思っているんだね
それに
それに?
憎いやつらを殺したとして。そうしたらきっと、やつらの両親は悲しみます
ああ、そうだろうね
その両親達は僕になにもしていません。だから、悲しませるのは良くないことです
そうか
今回も、お話を聞いてくれてありがとうございます
少しは落ち着いたかな?
つらかったことを思い出して疲れただろう。今夜はゆっくり、夢の中で遊んでおいで