武田くんは慌ててトランプを一つにまとめながら小岩くんを睨みつけました。それに少しもたじろぐことなく小岩くんは笑っていました。
なかなか面白いことやってるじゃないか。僕にもその奇跡を見せてくれよ
お前もやるっていうのか?
武田くんは慌ててトランプを一つにまとめながら小岩くんを睨みつけました。それに少しもたじろぐことなく小岩くんは笑っていました。
あぁ、それに一日だけ賭けるんじゃ面白くない。向こう一週間くらい賭けようじゃないか
お前、さっきの聞いてたのか? 今日の俺は超がつくほどラッキーボーイなんだぜ
だったら断る理由もないだろう? 君が勝ったら僕が君の一週間の宿題と掃除当番。僕は勉強は嫌いじゃないから君が勝ったら掃除当番だけでいいよ
そう言って小岩くんは私を見ました。冷たい氷みたいな瞳でした。口元は笑っているのに、どうしてそんな目をしているのか私には少しも推理できません。
君もチャンスが欲しいかい?
え?
このコイン。これをトスして表が出たら君とその隣の男の負け分も賭けに乗せようじゃないか
えっとつまり?
僕が勝ったら、今日と明日の掃除と宿題は自分でやってもらうってことさ。僕の方がリターンが少ないからそれでバランスは取れるだろう。でも自分の力でその権利は掴んでもらわないとね
わかった。やります!
小岩くんがいつもくるくる回している金色のコイン。それを受け取って、私はタメを作った親指に乗せます。
えいっ!
ピンと音を立てて宙に舞ったコインを手のひらで受け止めると、上になっていたのはきれいなお姫様の横顔でした。
表(ファース)だ。君もなかなか幸運の持ち主のようだ
小岩くんは不敵に笑って座っている私に立つように手で示すと、私の代わりに武田くんの向かいに座りました。
さぁ、始めようか
ラッキーボーイだと言っていた武田くんは世界中の不運を飲み込んだように顔を真っ青にしながら集めたカードの山を震える手で切りはじめました。