それは授業が終わって、ホームルームが始まるまでの小休憩時間のことでした。

武田

よし、じゃあ今日の掃除当番よろしく!

山下

そんなぁ

 後ろの席でトランプをして遊んでいる二人がいたのです。

 一人は武田くん。もう一人は山下くん。友達関係に口を出すのはあまりよくないと思っていたけど、いい関係には思えませんでした。

どうしたの?

山下

あぁ。ポーカーで負けた方が宿題と掃除当番変わるって勝負したんだよ

えっと、賭け事はよくないと思うよ

武田

いいだろ。金賭けてるわけじゃないんだから

山下

それにしたって強すぎるよ。一週間ずっとだよ?

武田

なんだよ! 俺がズルしてるって言いたいのか?

山下

そんなことは言ってないけど

 威圧するように言った武田くんに山下くんはすっかり怯えてるみたいです。

一週間もずっと?

山下

うん。一回勝負だから確かに負けが続いてもおかしくないけどいつも武田くんはいい手を引いてくるんだ

そうなんだ

 私は机に広げられた勝負の後を見ました。トランプの山に、裏に伏せた五枚組のカードが二つ。それから表になった五枚組のカードが二つ。山下くんは4のワンペアで武田くんはKのフォーカード。フォーカードはポーカーではかなりの役だからちょっとやそっとじゃ勝てません。

武田

なんだよ、村島。疑ってるのか?

いえ、そういうわけじゃ

 最近はホームズを読み耽ってすっかり自分も名探偵気分の私は、何か裏があるんじゃないかと勘ぐってしまいました。だって一週間も勝ち続けるなんてそんな偶然そう起きないから。

武田

ならお前もやってみるか? 明日の掃除当番と宿題賭けて

山下

武田くんは本当に強いよ。やめた方が

わかった。やってみる

 危険に飛び込まなければ推理へのヒントを手に入れることなんてできない。そう思って私は浅はかにも武田くんに挑戦することに決めました。

一話:コインの表の裏は表(事件編)Ⅱ

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