高校に入学して一週間が経ちました。

 私、村島和には気になることが二つあります。

 一つは最近読み始めた『シャーロックホームズ』の続き。まだ一冊目の途中だけど、天才探偵がどうやって事件を解決に導くのか、ドキドキが止まりません。

 そしてもう一つは、隣の席の小岩焔くんのこと。

 とても無口で私はまだ一言も話すことができていません。何度か声をかけたんだけど、答えは返ってきませんでした。休み時間はいつもブックカバーのかかった本を読んでいるか、右手できれいなコインをくるくると弄んでいる、ちょっと不思議な男の子です。

……

 切れ長の鋭い目とハーフかと思えるような白い肌に高い鼻。入学した時から注目の的で特に女の子がたくさん集まっていろいろと声をかけたんだけど、少しも反応してくれないせいで、今は潮が引いたみたいに誰も集まらなくなってしまいました。

 本人は少しも気にした様子はないみたいで、今日も変わらず中身の分からない本を読みながら、右手でコインをくるくる回しています。

せっかくお隣になったんだし、何か話してみたいなぁ。緊張してるだけかもしれないし

 そう思って、学校のことや中学の話、部活に入るのか、なんて聞いてみたけど、やっぱり何も答えは返ってきませんでした。私の高校生活が不安になります。

 そんな小岩くんと私が行動を共にすることになる事件はさらに一週間後に起こったのでした。

一話:コインの表の裏は表(事件編)Ⅰ

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