黙ったまま前を歩いていく紫季は



ある扉の前で止まった。




そして

冷たい目をしたまま
晴紘を振り返る。

晴紘様があまりに五月蠅(うるさ)いので

……

良(よ)うございますか?
今から晴紘様にお見せするものは『見るだけ』でございます。
手を出すことは叶いません































鐘が鳴り響く。

音色が錆びついているってこと、言い忘れてた……


他に思うことがあるはずなのに
そんなことが頭をよぎる。










大きな音だ。

踏みしめている足元を
揺るがすくらい。


その音もあちこちに反射して、
どこで鳴っているのかわからない。





こんなところに連れて来て、いったいなにを、

……



紫季は襟元から
ペンダントのようなものを
取り出した。

否、ペンダントではない。


鍵。



手に持つ部分に通っていた
細い鎖を外し、

紫季はその鍵を






過去を、お見せ致します

鍵穴に差し込んだ。











pagetop