……見ることができればよろしいので?


冷え冷えとした声に
晴紘は顔を上げた。







紫季が瞬きもしないで
じっと見上げている。

なに? 紫季ちゃん自ら囮となって深夜の街頭に立って頂けると、

そんなことはしません

その距離に
後ろめたさのようなものを感じて
晴紘はおどけたような言葉を吐く。

しかし彼女は笑いもしない。

見るだけとお約束できるなら、手を貸しましょう

それって、どういう……?







手が差し伸べられる。

さっき
自分がよれよれのハンカチで
拭った手が。


この手を取れば、
「見る」ことができるのだろうか。


どうやって

過去を見るなどと。







そんなことはできっこない。

いくら彼女の主人が
代々稀有な機械類を作ることで
高名な家の者だったとしても
あり得ない。




そう
わかっているのに





手は勝手に
ゆるゆると持ちあがっていく。











差し伸べられたままの
白い手のひらに重なる。
























俺は。
































悪魔に魂でも売ってしまったかの
ような面持ちで、


晴紘は紫季に手を引かれるまま
立ち上がった。








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