その数日後のこと。
苛々とした顔を
隠しもしないで帰宅した晴紘は
そのまま自室に引き籠っている。
この数日
泊まり込みで捜査をしていた。
ちゃんとした食事も
とっていたかどうか怪しいところだし
まともに風呂にも入っていないだろう。
それでも昨日、
着替えを持って行った時には
.
疲れている様子ではあったが
軽口を叩く気力はあった。
……
他人に興味を示さない紫季でも
いつもへらへらと笑っている
同居人の異変は気にかかったらしい。
盆にカツ丼を乗せ、
扉を叩く。
返事は無い。
再度叩く。
……
容赦なく叩き続けること十五分。
苦虫を噛み潰したような顔が現れた。
……
彼は紫季を見下ろし、
……
盆の上の物を見て
口元を歪める。
……なんでカツ丼?
お疲れのようでしたので
紫季にしてみれば
言葉どおりの意味しかない。
お仕事お疲れ様、と。
泊まり込んでいる間は
余程食べ物に縁がないのか、
普段の彼なら
肉が出て来るだけで
大喜びするはずだった。
しかし。
なんで……
晴紘は声を震わせる。
その異常な様子に
紫季は眉をひそめた。
勝ってもいないのに『カツ』丼とか、なんの嫌がらせだよ!
晴紘は丼碗を払いのけた。
盆ごと弾き飛ばされた丼は
放物線を描き、
と音を立てて
板張りの廊下に叩きつけられた。
汁を吸って変色した白飯や
卵の付いた肉片が
無残に散らばった。