風が窓枠を鳴らす。





その前の娘は胸、それと尻に腹に首。
あとは頭と足が揃えば人間ひとり出来上がるね

……


灯里に言われると
猟奇事件も耽美なものに
なってしまいそうになるのは、

きっと彼が
浮世離れしているからなのだろう。




その手で
美しい娘を作りだすような
彼だからこそ
許される台詞だと言える。













自分が口にした日には、

またそんな馬鹿なことを!


木下女史に殴られて
終わりだ。




















































……ピアノを嗜む娘の手は、やはり上手に弾くのだろうか

は?

灯里の呟きに
晴紘は思わず固まった。

ああ、気にしないで

人形のパーツとは違うよね

自分でも変なことを言ったと
思ったのだろうか。

灯里は目を伏せる。









まるで人形のような仕草だ。


自動人形たちを
ただの人形以上の目で
見てしまうのは

どうにも
彼のせいなのかもしれない。




彼の一挙一動は
彼女たちの所作によく似ている。

言いかえれば、
彼女たちの所作を見るたびに
彼を重ね合わせて見る
自分がいる。
 













人形のパーツとは違うよね

その考え方は荒唐無稽だと
笑う者もいるかもしれない。


切り取られた手は
ただの死体の手であって、

それを



例えば
他の腕につないだとして





……生前の手と同じように
動くことはない。













目で譜面を見て、

頭で分解して、

そして送られた信号で手が動く。



ピアノを弾くと言うことは
そういうことだ。






手だけあってどうする。






……でも




生まれも

育ちも

年齢も

女性だと言う以外は
共通点のない被害者たち。




しかし
パーツとして考えるのなら

何処かに共通点が
出てくるような気がした。














胸を奪われた娘は、

首を失った娘は、



なにか得意とするものが
あっただろうか――?















【壱ノ参】奏でるための手・弐

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