次の日学校へ行くと、典型的ないじめはエスカレートしていた。
なぜならば、昨日どこからともなく情報が洩れ、あたしは不正を働き、最下位の序列を賜ったと、そう噂されたからである。
情報源なんて知りたくもない。
考えたくもない。
次の日学校へ行くと、典型的ないじめはエスカレートしていた。
なぜならば、昨日どこからともなく情報が洩れ、あたしは不正を働き、最下位の序列を賜ったと、そう噂されたからである。
情報源なんて知りたくもない。
考えたくもない。
絢香ー。
なんか靴箱すごいねー
例によって学校に行きづらいのではと思ってきてくれた友人とともに学校へ来ていたことに感謝した。
逆によくこれだけゴミを集めたなと感心するほどのゴミを見つめる。
悪意の塊が靴箱に押し込められてる。
そんな光景だった。
誰か袋持ってない?
袋でどうにかなる?
てか上履きどうすんだ?
職員室からスリッパ借りれないかな
いっそ靴のままとかー?
ふっふっふっ!
うわ、気持ち悪い
様々な案を口にするみんなに不敵に笑う。
そうしたら、牧に気持ち悪いって言われて、ちょっと悲しかった。
こんなこともあろうかと、新しい上履きを持ってきました!
おお!さすが絢香ちゃん!
というか、靴のままとか先生に怒られるわよ
ほんとだよね
だから匠はだめなんだよ
上履き問題は解決。
しかしゴミ袋がない。
仕方なく靴箱は放置で教室に上がることにした。
今後は毎日袋持ってこないとね。
痛い出費だわ。
教室へ入ると、予想外に机がきれいだった。
……机、きれいね
ぽろりと出た言葉に三宮君が反応した。
さっき、僕がきれいにしたんだよ
え、ごめん。
ありがとう。
めんどくさかったでしょ?
ううん。
教室の備品だからね
でも、目をつけられたりとかしない?
僕これでも高位だから、大丈夫大丈夫
……ありがとう
牧たちの他にも味方がいるってだけで心があったかくなった。
うれしいなって本当に思う。
きっと今日からあたし地獄がだから。
気持ちを切り替えて頑張らなくちゃ!そう思って息を吸った時に、香水の香りがした。
あ、絢香ちゃん……
匂いと声だけでわかる。
なに?悠美
そっけなく返せば、オロオロとした様子の悠美が見える。
は、話がしたくてぇ……
どのお話かしら?
いろいろ……絢香ちゃん、誤解してると思うしぃ
誤解ねぇ?
お昼休み、音楽室で待ってるからぁ
それだけ言うと、悠美は自分のグループに戻っていった。
何やら話しているようだけど、さすがにこの距離じゃ聞こえない。
行くのか?
行くわよ
千裕が確認してきたけど、行かない選択肢なんて私には用意されてない。
それに何がどう誤解なのか、きっちり話を聞きたい。
予鈴が鳴り、みんなが席に着く。
心配そうな顔の友人たちに手を振ればホッとしたように前を向く。
お昼休みぁ……怖いなー。
そんな思いを胸に1日は始まった。
お昼休みに音楽室へ行くと、すでに悠美が待っていた。
お話って何かしら?
今日は絢香ちゃん近くに来ても大丈夫だよぉ
怖いからここにいる
だよねぇ。
やっぱり、悠美のこと嫌いになったよねぇ
うーん。
それより怖い、かな?
嫌いじゃないんだぁ?
うん、怖い
へー、怖いんだぁ
……そうね
じゃあ、悠美に怒ってるぅ?
……悲しい気持ち
悲しいかぁ
帰ってもいいかしら
うん。絢香ちゃんが怒ってもないし、嫌ってもないならお話することないもんねぇ
……帰るね
ばいばーい
そういって廊下に出てレコーダーを切る。
この会話ならどこをどう使っても変な誤解は生まないだろう。
きっと、大丈夫。
そう信じて、教室へ歩き出した。
悠美は言質を取りに来ている。
その恐怖感だけをしっかりと体に刻み込んだ。