すごく、長い一日が終わった。



朝、どん底に落ちて、挽回のチャンスはなくて。

泰明とも話せなくて。

メールも、電話もしたのに、取り合ってくれなくて。
 


あぁ、本当にあたしの知ってる彼じゃないなって思って。

あたしの気持ちは届かないんだと実感した。
 


夜、お布団に入って、それでもあたしは未練がましく、連絡を待つ。
 


2時を回ったところで、目を閉じた。

明日、学校に行くことがすごく、すごく怖かった。

目覚めは最悪の気分だった。

今日から学校は地獄だと思う。
 


昨日一日であれなんだから、これからのことを思うと自然と心が暗くなる。

いつもは励ましてくれる存在が今はない。

ポカリと心に穴が空いたようだった。
 


授業の準備をして、身支度をして朝ごはんのパンを食べる。

いろいろありそうだから大好きなシュガートーストにしたのに、まるで砂でも食べているようだった。ジャリジャリする。
 


時計を見れば、ぎりぎりに学校に着く計算でもあと5分で家を出なくてはいけない。
 


普通なら学校についてる時間だ。
 


嫌だなぁ。

学校休んでしまいたい。
 


昨日の悪意のある視線は、あたしの心を疲弊させるには、十分だった。


 
あたしはあんまり男性関係派手じゃないからかもしれないけど、もし仮に、あたしの初めての彼氏が泰明じゃなかったら、何がそんなに問題なんだろう。

うそをついたこと?

それとも、なんだか二股みたいに見えたこと?

でも、実際一瞬でも二股かけたのあっちだよねぇ?
 



考えれば考えるほど、あたし悪くないって気持ちが強くなる。

そうこうしてると、そろそろ遅刻しそうな時間になってきた。
 


突然チャイムが鳴った。

絢香

こんな時間に誰よ?

玄関のほうに行き、のぞき窓から外を見る。

覗いた小さな窓から千裕たちが見えた。

慌てて、玄関を開ける。

絢香

ど、どうしたの

絢香ちゃん、一人だと生きたくないかと思ってね

拓也

そう思った人間が牧しかいなかったんだけどさ

それで、ぎりぎりになったんだよー

それに案の定、絢香学校行ってなかったし

絢香

……

千裕

ん?どうした?

うつむいたあたしに、声をかけてくれる友達。



そうだよね。

勝手に絶望してたけど、あたしには、千裕たちがいるもんね。

あたしが落ち込んでたら、友達に失礼だ。
 


心配そうにのぞき込む千裕の顔を見たら、頑張ろうって気がわいてくる。

絢香

ありがと。
確かに学校行きたくなかった。
休もうとしてた!

ぎゃー!
やっぱり来てよかったじゃん!

ほら、3人ともあたしに感謝しなさい!
みんなの大好きな絢香がもう少しで不登校よ!

千裕

ちげーよ、俺は信じてたんだよ!

そうだよ!
ねぇ、絢香。
オレたち別にそこまで気が回らないんじゃないよ!

拓也

僕に至っては、どうでもいいと思ってた。
勉強したい

絢香

みんなが来てくれてよかったー。
拓也はあとでわからない問題教えるから許してー

ほわほわと暖かい気持ちが心に流れ込んでくる。

ああ、やっといつもの調子になってきた。
 


それがみんなにも伝わったのか、空気が和む。

和んだところで、ふと時計を見た。

絢香

……みんな、ありがとう。
まさか一緒に遅刻してくれるとは思わなかった

え?

牧が慌てて時計を見る。

 
サァっと血の気が引いてくる。

 
そう、私たちの学校意外や意外、遅刻無断欠席にはうるさいのである。

絢香ちゃん!
ボケっとしてないで、はやく鞄もってきて!

千裕

無理か!?
無理か、間に合わないか!?

拓也

僕は学校に行ったときに、絢香を迎えに行くって言ったから、大丈夫

なーんで、オレ達のことも言ってくれてないの!?

拓也

早く学校に来てた僕の特権

絢香

さぁ、うだうだ言ってないで走るわよ!

鍵を閉めて、走り出す私たち。
 
確かに学校は、すごく怖いけど、みんなと一緒にいれば大丈夫。
 
そう思える友達がいたことに感謝した。

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