先に教室についていた拓也や、なぜだかここにいる三宮くんの情報によると、悠美が金曜の放課後、何者かに階段から突き落とされて怪我を負ったらしい。

犯人はわからないが、どこからかあたしの名前が出たらしい。

絢香

なんで私?


拓也

教室の流れだと、松崎さんが体力テストのことを根に持ってるって


絢香

どこに根に持つ必要が!?


三宮くん

一人勝ちしたかったのに南波さんと接戦したからって


絢香

それ、誰が言いだしたの?


拓也

そこまではわかんないけど


絢香

翠ちゃんあたりが言いそう……


拓也

僕は、そのあたりで学校に来て、様子みてたんだけど

拓也はたいそう驚いたそうだ。

絢香ほそんな足のつくようなことしないだろうと、思ってくれたらしい。

信じてくれるのほ嬉しいけど足つかなかったらやるみたいなこと考えるなとあたしは言いたかった。

拓也

それで、なんかそのまま絢香が犯人なんじゃないって話になって


絢香

誰も否定しなかったのが、悲しいわ


拓也

できる空気でもなかったしなー


絢香

それで?
なんで私が誰とあったかが重要なの?


千裕

それは俺から

拓也が話そうとするのを止める千裕。

止める意味がわからなくて首をかしげる。

顔を伏せる匠に、少し助かったっていう顔の拓也が気になる。

千裕

泰明が最近、悠美と連絡とってるの知ってたか?

一瞬、何を言われているのかわからなかった。

泰明は先週の頭までは悠美に押されているあたしのことを励ましていたのだ。最近ていつからだ。

あたしは、そんなの知らない。知りたくもない。

この流れでこんな話。聞きたくもない。

絢香

待ってよ、なんで?


千裕

最初におかしいなって思ったのは、あいつがお前にほかに男がいないかって聞いてきたとき

あ、そういえば、やたらめったら泰明のどこが好きか聞かれた日があった。

でも、その時は全然、なんにも考えてなかった。

その時は泰明も笑ってたもの。
そんな素振りなかったもの。

千裕

俺たちもバラバラに南波に耳打ちされたんだ

『絢香ちゃんて、誰と付き合ってるんですか』

千裕

俺たちは当たり前だけど、泰明って答えた。
けど、悠美は首をかしげた

『おかしいなぁ。絢香ちゃんこの間、泰明くん以外の男子と一緒にいたのにぃ?』


言葉をなくす。

あたしは泰明以外の男子と自発的に二人になる時はちゃんと連絡してる。

この間の千裕の時だってちゃんと連絡したし、それを信じてもらえてると思ってた。

あたしが誰か別の人と何かあるなんて信じないものだと思ってた。

千裕

あの日から、あいつら連絡取り合うようになったんだ


絢香

私と、あんまり一緒にいなかったのもそのせい?


千裕

そこまではわからない


絢香

きっと、忙しいんだって思ってたのに


千裕

それでだ、昨日の聞いたか?

明らかな不満を声に滲ませれば、千裕は不満を聞く前に話を進めた。

どうやらこんなの序の口らしい。

不満は後回しということだ。

絢香

私が突き落としたって奴?


千裕

あれな、タイミング悪かったんだ


絢香

どういうこと?


千裕

金曜さ、俺たち泰明に相談受けてたんだ

3人が携帯の画面をいじって、携帯を出す。

千裕

これ、どういうことだと思う?

3人の差し出す画面には、遠目にあたしみたいなシルエットと、知らない男子のチューショットだった。

でも、その写真は“あたしみたい”ってだけで、よく見れば全然あたしじゃない。

それに、あたしはこんな夜遅そうな時間にこんな場所にいない。

そんなの考えればわかるじゃない。

よく見ればわかるじゃない。

絢香

あたしじゃない


千裕

俺たちもそう言った


絢香

じゃあ、なんで、ここに全員でいるのよ!


千裕

そのあとに来たもの

千裕に当たれば、拓也が携帯を無理やり見せてきた。

そこには昨日のナンパ男とあたしがいた。

絢香

これって

顔を上げると、拓也が残念そうな顔をする。

やめてよ、そんな顔をしないでよ。

あたしやだよ。認めたくないよ。

拓也

これが決定打

拓也

それで昨日の放課後の事件


千裕

ごめん

千裕

俺が呼び出したりしたから


絢香

……泰明なんて?


千裕

裏切られたって

裏切ってもいないのに、裏切ったって言われる気持ちって、こんなに辛いんだ。

状況はあたしに何も味方してくれなくて、時間も刻々と過ぎていき、対策なんて考える暇もなく、教室に行く時間になった。

14時間目:不安定な未来

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