序列決定を一週間後に控えた日。
朝、待ち合わせ場所に泰明がいなかった。
メールを見るけど、何もない。

絢香

寝坊でもしたのかな

電話をしてみる。
出ない。

変なの。ギリギリまで待って、それでも来なかったらメールを入れて……それでもこなかったら、先に学校に行っておこう。

体調でも崩してるのかもしれないし。

そう思ってあたしは泰明を待った。

でも、泰明は待ち合わせ場所には現れなかった。

あたしは、不思議に思いながらも学校に向かう。

なんの連絡もなく一人で学校に行くのは、いつもと違う感じがして、不気味だった。

学校に着くと、先に学校についてた拓也が靴箱にいた。

絢香

おはよー


拓也

あ、おはよ


絢香

泰明知らない?
待ち合わせに来なくて


拓也

あ、なんかさっき教室にいたよ


絢香

そうなの?


拓也

教室にいるとこは見てた

そこまで話して、ふと気がついた。

なんで教室にいたはずの拓也が靴箱にいるのだろうか。

疑問に思って拓也を見る。

絢香

拓也はなんで靴箱にいるの?


拓也

ちょっとね、絢香ちゃん待ってました


絢香

何事?


拓也

行けばわかるけどね。
とりあえず、僕は絢香の言う事を先に聞こうと思って

意味がわからない。

首をかしげていると、靴箱に三宮くんが足早にやってきた。

三宮くん

あ、松崎さん、おはよう


絢香

おはよう


三宮くん

松崎さんて、金曜の放課後何してた?


絢香

え?
お店で勉強して、部活終わりの千裕に会ってた


三宮くん

それだけ?


絢香

ほかには……。
そうね、ご飯食べてたわ


三宮くん

……じゃあ、なんで?



拓也

千裕としか会ってない?


絢香

会ってない


拓也

会ったのは何時頃?


絢香

え?


拓也

部活終わり?


絢香

う、うん。
部活終わってからだから、7時半?くらいじゃない?


拓也

それ以外に男子と会ってない?


絢香

あってない。
と、思う


拓也

声をかけられたりは?

なんだか酷く尋問されてる気がするけど、きっと気のせいではないんだろう。

よくよく自分の行動を振り返ってみる。

絢香

……男の人にナンパされた


拓也

それかな?

納得のいったような拓也の態度にますますわけがわからなくなる。

絢香

わけ分かんない


拓也

さっき、匠に千裕を呼んでもらったから、千裕が来てからね?


絢香

あー、とりあえず、まずいことだけは理解した

それきり、3人とも喋らなくなって、とりあえず、あたしは荷物を床に置いた。

どういうことかしら。
放課後、あたし何かした?

昨日の放課後といえば、先にお店に入って、お腹がすいて食べ物頼んで、食べてる時に変な人たちに絡まれた。

今まで強引なナンパは数あったけど、席に座られてのは初めてで、攻めの姿勢に爆笑してしまった。

そのナンパさんが諦めて、あたしは勉強を始めて、少し時間が経ったら、目の前にトレイを持った千裕がいた。

うん。あたしは何もしてない。普通に生活していただけだ。

そう思って、拓也の方を見れば、難しい顔をして、あたしと目を合わせることはなかった。

三宮くんも、なんだかそわそわしてるし、あたしは、何をしてしまったのだろうかと、緊張する。

取り返しのつかないことだったとしたら、ゾッとする。

顔を上げれば、血相を変えた千裕が走ってくるのが見えて、ああ、これは、何かやっちまったと、あたしは感じていた。

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