明彦

俺はどうすれば良いんだろう……。わからないにしても結月に直接不機嫌の理由を訊くのは流石にどうかと思うし……。
……いつもなら悩むまでも無く結月の事位わかるのに……

 星華男子高等学校の校門が見える距離になっても明彦は先程別れた結月の不機嫌な理由がわからず悩んでいた。
 悩んでいるせいで挙動不審の明彦を通り過ぎる男子高校生達が訝しげに見ながらも距離を置いている事にさえ気が付かないレベルで悩んでいた。

明彦

もし俺と結月が恋人じゃなく幼馴染のままだったらわかってたかな……

 ついにそんな事まで考え出す。
 そんな明彦は周辺の様子等完全に見えていなかったため門にぶつかりそうになった。

???

危ない!

明彦

えっ?

 誰かに腕を捕まれて思わず声を上げれば門にぶつかりそうになっている事をやっと理解する。

???

大丈夫?

 心配する声を視線で追えばそこには目を引く茶髪の美少年の姿があった。

???

君さ、考え事しながら歩いてると危ないよ?
俺が腕を引かなかったらそのまま門に激突してた

明彦

えっあ、有難うございます。
ご迷惑を掛けてどうもすみません

 流石の明彦も妙なモードに切り替わる事無くそう返す。

???

まぁ良いけど、気をつけなよ?
俺がたまたま君を視線で追ってたから今回は大丈夫だったけど……激突したら大きな怪我にも繋がりかねないからね

明彦

はい……

 明彦は頷いたが、ふと違和感を覚えて考え込む。

明彦

あれ?俺を視線で追ってた?

 明彦が考えた事を理解したように彼は口を開く。

???

ああ、視線で追ってたって言われたら驚くよね?

 明彦は鋭い彼に驚きながらも首肯する。
 更に彼は明彦が驚くような事を口にした。

???

最初はまさかとは思ってたけど考え込むと挙動不審になる癖変わってないね。
白峰明彦……アキ君

明彦

貴様何故俺の現世の名を……

???

ああやっぱり正解だね。でもその妙な発言は幼馴染のユズちゃんの影響かな?
昔はそれ無かったと思ったけど……

明彦

貴様何者だ!
……俺のメシアのあだ名まで存じ上げているとは……!!

???

メシアって救世主? へぇ面白いね。
思い出せないかな……俺、小学校の時に仲良かった神谷敬一なんだけど

 明彦は彼の自己紹介に小学校の頃を思い出すが、目の前の敬一と一致する人物は浮かばない。
 代わりに全く違うようにも見えるのだが、彼と同じ名前の旧友の姿が浮かんで驚きながら半信半疑でそのあだ名を言った。

明彦

敬一って……ケイ?

敬一

あ、思い出してくれた? そうだよ正解

明彦

…………

明彦

俺の知ってるケイは黒髪眼鏡のどちらかといえば目立たないタイプじゃなかったかな……

 明彦は旧友の変わりように思わず無言になる。
 そんな明彦の内面を敬一は鋭く見抜く。

敬一

あの地味で目立たないケイが……って思ってるでしょ? まぁ信じられないよね

 そんな彼の鋭さはしかし明彦も覚えがあった。

明彦

でもそんなように鋭く考えている事を見抜くのは……やっぱケイだね

 完全に小学校時代の友人と一致したからか、当時のように素直な台詞が口から出る。

明彦

でも本当に凄い変わりようだな。ケイはそんな一気に容姿変えるような性格じゃなかったし、こんなテンションでも無かったと思ったけど……

敬一

今アキ君さ、俺の変わりように驚いてどうしたのか訊きたいけど訊いて良いのか判断出来なくて困ってるでしょ?

 明彦の様子を見た敬一は何を考えているか再び言い当てた。
 昔から彼は何をやらせても完璧にこなし、人の内面を見抜く事を得意としていたのを明彦は改めて思い出す。

明彦

……相変わらずケイは凄いな

 思わずそう漏らした明彦に敬一は溜息混じりに言う。

敬一

まぁ良くも悪くも俺、天才だからね。
別にそうなりたかったわけじゃないんだけどそうならざるを得ない家に居たから

明彦

神谷医院の一人息子だもんなケイは。
神谷先生も神谷看護師長も厳しい方だとか……

敬一

アキ君が言う程では無いかな。俺の両親は俺の教育については物凄い力を入れてるみたいだけどそれ以外には興味無いみたいだからね

明彦

そうなのか?

敬一

そもそも顔さえ合わさないからね。家庭教師の先生と関わってる時間の方が何倍も多いよ。
俺が髪を染めて眼鏡からコンタクトにしたら怒ってきたりするかななんて思ったけどさ、一切そんな事無いし勉強さえやって成績でクラス順位の上位を取ってれば何も言わないよね

 敬一は淡々と明彦が考えられないような事を言う。

明彦

ケイ、寂しくないか?

敬一

まぁそれなりに寂しいから俺、来るもの拒まずでやってるんだろうね

明彦

来るもの拒まず?

 思わず問い掛けた明彦に敬一は楽しそうに言った。

敬一

ああアキ君には早いかな? 女の子の事だよ

明彦

お……女の子……!?

 思わず明彦の表情が曇る。
 それを当然見逃さなかった敬一は楽しそうな表情を一変し、心配そうに言った。

敬一

もしかしてアキ君……ユズちゃんと何かあった?

明彦

……やっぱわかるか

 これによって面倒彼氏・明彦の恋愛相談が始まる事になったのである。

1-3 面倒彼氏の天才な旧友現る(修正完了)

facebook twitter
pagetop