悪魔のように変わってしまったガイーラの顔が、俺たち３人に言い放つ。

　アルモはその場に硬直し、レイスも自分の目を疑うような表情をしている。

　レイスの問いかけに答えるように、目の前のガイーラもどきは、みるみるとその姿を竜人へと変えた。

　地面に落ちる剣の音が鳴り響く。

　硬直していたアルモの手から、月明りの剣が抜け落ち、地を這る。

　呆然と立ち尽くすアルモの前に出た俺は、突然切りかかってきたラジマの攻撃をショートソードで受け流す。

　ショートソードとラジマの青龍刀が交わり発生した金属音で我に返ったアルモは、月明りの剣を拾い上げると、目の前に構え全身から黄色いオーラを放ち出した。

　俺は、ラジマを青龍刀ごと強引に前方へ押しのけると、アルモの横に立つ。

　その横には、正気を取り戻したレイスの姿もある。

　俺からほんの少し遅れてアルモ、そしてレイスが、ラジマに対して一斉攻撃を仕掛ける。

　先陣を切ってラジマに切りかかった俺のショートソードの一撃は、予想通りラジマの青龍刀によって受け止められてしまう。

　だが、素早く俺の攻撃を弾き返そうと激しい力を出すラジマを尻目に、俺は弾き返されないよう全身全霊をかけて青龍刀から伝わってくる力を何とか相殺する。

　そして、後ろからアルモがラジマに切りかかるのを見計らって、ラジマの力を相殺していたショートソード越しにかけていた力を突然抜き、横に飛びのく。

　ラジマは突然の出来事に対応できず、前のめりになった。

　月明りの剣を横に構え突進してくるアルモ。

　その切っ先が、ラジマの横っ腹に向かい弧を描いた。

　前のめりになりながらも、青龍刀を盾にして月明りの剣の攻撃を防ぐラジマ。

　ところが…

　次の瞬間、ラジマの青龍刀は粉々に砕け散った。

　青龍刀が粉々になった瞬間、アルモは俺とは逆方向に飛び退いていた。アルモの後ろから突撃してくるレイスの進路には、武器を失い呆然と立ち尽くすラジマ以外何もなかった。

　振り下ろしたロングソードに確かな手応えを感じたレイスは思わず叫んだものの、次の瞬間、その手応えは懐疑に変わった。

　レイスが捕らえたはずのラジマの体は、無数の光の粒と化し周囲に離散してしまったのだ。

　相手への感心とも、自らの力への呆れとも取れる口調でレイスが話す。

　その間に、光の粒になり周囲に離散していたラジマの体が集合し、実体化した。

　刹那、ラジマは瞬間移動の魔法を唱え、謁見の間から姿を消した。

　３人は図らずも自らの武器を同時に手放すと膝をつき、虚空を見つめることしかできなかった。

Episode5　に続く