勝手口からの侵入に成功した俺たちは、ガイーラを先頭に謁見の間へと向かっていた。
勝手口からの侵入に成功した俺たちは、ガイーラを先頭に謁見の間へと向かっていた。
…それにしても、ワイギヤ軍の兵隊が全く現れないわね…
…外壁には占領を示す旗の掲揚、町への放火、放火による城内への延焼は地形の関係から心配されない…
そんな状況下で、占領した城内に人っ子一人姿が無いというのは…
主、心当たりはお有りか?
特に思い当たるふしはないが…
考えられることと言えば、既に国王陛下が殺害されたか国外へ連れ出されたかで、フォーレスト自体を占領の価値なしと判断し、王城と城下町双方を放棄したか…
確かに、放棄したというなら、この状況の説明にはなるわね
…でも、そうなった場合、フォーレスト国の国家体制はどうなってしまうんだ!?
俺の村も微弱ながらもフォーレスト国の守りがあったからこそ、今日まで成立していたのだし…
そう言われてもな…いずれにしても、まずは国王陛下の安否を確認しよう。
考えるのは、それからでもいい。
フォーレスタ村の村長一族の血が騒いだのか、俺は思わずガイーラに詰め寄るような言い方をしてしまった。
だが、ガイーラは俺の詰め寄りを軽くかわし、再び俺たちの先頭を歩き始めた。
その数分後、俺たち4人は大きな重厚感のある扉の前まで来ていた。
ここが、謁見の間への入口だ
扉が閉まっているわね…
正面から正々堂々突入するか!?
アコード、それじゃ無策にも程がある…
レイス、冗談だよ…アルモ、どう思う?
そうね…ガイーラさん、謁見の間へは、この扉を通るしかないの?
ああ。万が一の時は、この場所が陛下を守る最終防衛ラインになるからな…
背後を突かれるようなことがあってはならない訳で、入口はこの扉しかない…
それじゃ、冗談じゃなく強行突破するしかないんだな…
待て!私に策がある…
レイス。策とは?
これです。主
すると、レイスは右の手のひらを皆の前に差し出すと、魔法で鼠を作り出して見せた。
これは『アオーフ』という魔法で、この鼠が見たものを私の目に映し出すことができる
便利な魔法ね!
ただし、もしこの鼠に何かあれば、私の体にも同様の事象が起こってしまう。
便利ではあるけど、その分リスクも大きいのさ…
レイス…そんな危険な魔法を、使ってくれると言うのか…
ヘマはしませんから、主は安心して見ていて下さい
レイス、気をつけて…
何かあったら、すぐに魔法を解除した方がいいわ…
アルモにアコードも、ありがとう…
そうレイスが言うや否や、手のひらに乗っていた魔法の鼠は、レイスの腕、脇の下、そして足を通り地面に到達すると、扉の隙間から中に入って行った。
どうだ、レイス。中の様子は…
…どうやら、誰もいないみたいです
とりあえず、入口付近に誰もいないんだから、扉を開け中に入ってみた方がいいんじゃ…
そうだな…レイス。魔法を解いてくれ
承知しました
レイスの集中が解かれ、それまで眉間に寄っていた小さなシワが顔から消え失せる。
それじゃ、俺とアコードが扉を開くから、アルモとレイスを先頭に、謁見の間に突入してくれ
レイスの魔法では、中には誰もいないように映ったようだけど、奥の奥に敵が隠れているかも知れない。
アルモとレイス、突撃する際は十分に注意してくれ!
アコード、心配してくれてありがとう!でも、私は大丈夫よ。それにレイスも、ね
ああアルモ。
それよりも、私たち2人に遅れを取るなよ、アコード!
分かった
それじゃ、12の3で扉を押すぞ…1…2の…3!!
重厚感のある観音開きの大きな扉が、音を立てて開いていく。
そして、人1人通れる隙間が出来た瞬間、アルモ、レイスの順番に中に突入する。
私たちも行くぞ、アコード
ああ!!
そして、扉を押すのを止めた俺、更にはガイーラが殿で中に突入した、はずだった。
??
突入して間もなく、今潜り抜けた扉が閉じる音が後方から聞こえてきたため、その場に立ち止まり俺は振り返った。
…ガイーラさん!何をやっているんですか!?
主…これは一体…
俺よりも先に異変に気付き、入口方向に向き直った2人が、ガイーラに問う。
振り返った俺の目に映ったのは、扉に手をかざし、魔法の力でそれを閉じているガイーラの姿だった。
ガイーラ…お前は一体…
扉を閉め終えたガイーラが、俺たち3人の方に向き直る。
…ガイーラ…さん?
…主…なんですか?
ガイーラの顔を見たアルモとレイスが、怯えた声で問いかける。
!
3人の目に映ったのは、あるで悪魔のように変わってしまった、ガイーラの顔だった。
第7話 に続く